002 魔剣ダンジョン脱出

 そういえば、敵と出会う前に俺のステータスを確認しておくことにする。


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 ラング 17歳 人型魔族(男) 

 レベル:5

 HP:50/50(10✕5)

 MP:75/75(15✕5)

 攻撃力:5(1✕5)

 守備力:5(1✕5)

 器用さ:5(1✕5)

 素早さ:5(1✕5)

 知 性:5(1✕5)

 幸 運:5(1✕5)

 スキル:パイソンLV1、貧乏LV10


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「相変わらず弱いなぁ」


 各数値は基礎能力とレベルを掛け合わせたものになっている。基礎能力は筋力トレーニングなどによって上がるらしい。俺は人型の魔族だから基礎能力が低い。


 それでも脱出する為には進むしかない。魔剣を握りしめて歩き続ける。


「あ! 今一番会いたいと思っていたモンスターだ!」


 ダンジョンの通路の真ん中に巨大な岩が転がっている。この岩はモンスターだ。


「このモンスターは近づいても襲ってこない大人しいモンスターだったはず」


 近づいてペタペタと触ってみるが、全く動く気配がない。大人しいモンスターだが、防御力が半端なく高いのだ。


 苦労して倒したとしても、得られるドロップアイテムの価値はそれほど良いわけでもない。つまり、普通は見つけても無視するようなモンスターである。


 しかし、今の俺にとっては簡単に経験値が稼げる最高のモンスターだ。魔剣テンペストブリンガーを大きく振り上げて斬りつける。


 ガシュッ! ゴロン


 一瞬衝撃があったが、その後は問題なく切り裂くことが出来た。


『レベルアップ! レベルが15になりました』


「え!?」


 思わず声を上げてしまった。たった1匹倒しただけでレベルが10も上がったのだ。


 ほとんど戦うことなくこの経験値はかなり美味しいと言える。


 まだ3匹ほど近くに居る。遠慮なく倒させてもらう。


『レベルアップ! レベルが23になりました』

『レベルアップ! レベルが28になりました』

『レベルアップ! レベルが32になりました』


「これいいな! レベルがサクサク上がるぞ!」


 もう既にレベルが32になった。このまま岩モンスターを大量に倒して脱出できるだけの実力を手に入れたいところだ。


 しかし、俺の希望はすぐに打ち砕かれた。今、目の前にいるのは剣の形をしたモンスター、リビングソードだ。ゆらゆらと揺れながらこちらに近づいてくる。


「逃げても追いつかれそうだし、この階層で迷ったら終わりだ。今は目の前の敵を倒すしかない!」


 こちらも魔剣を構えて、リビングソードが間合いに入るのを待つ。


「今だ!」


 横薙よこなぎの斬りつけでリビングソードを攻撃する。


 ガキィン!


 倒しきることは出来なかったが、リビングソードの刀身には小さなヒビが入っている。攻撃を受けたリビングソードは動きが激しくなり連続で斬りつけてきた。


「うわ! ちょ! 待って!」


 ガッ! ガキンッ! ガッ!


 リビングソードの手数の多さに押され、こちらは防戦一方になってしまう。だが、何度も攻撃を防いでいると、段々と慣れてきた。リビングソードの動きがよく見えるようになり、刀身のヒビが増えていることに気づいた。


 このまま防いでいれば勝てそうだ。でも、ここはこちらから仕掛けてみよう。


「ふっ!」


 リビングソードの攻撃に合わせてパリィを行う。リビングソードは大きく態勢を崩してヒビの入った刀身の腹を見せてしまっている。


「今だっ!!」


 俺は上段の構えから思い切り魔剣を振り下ろした。


 パキィィン!! カララン……


 リビングソードは真っ二つに折れて地面に転がった。


「か、勝てた……!」


『レベルアップ! レベルが39になりました』

『スキル 剣術を獲得しました』


「剣術スキル!? リビングソードと戦えば剣術の鍛錬たんれんになるのか!」


 その後も敵を倒しレベルアップしながら下の階を目指して進み続けた。



 ――現在、俺は50階まで降りてきた。


 レベルは順調に上がり今はレベル75にまでなった。ちなみにステータスはこんな感じだ。


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 ラング 17歳 男 レベル:75

 HP:750(10✕75)

 MP:1125(15✕75)

 攻撃力:75(1✕75)

 守備力:75(1✕75)

 器用さ:75(1✕75)

 素早さ:75(1✕75)

 知 性:75(1✕75)

 幸 運:75(1✕75)

 スキル:パイソンLV1、貧乏LV10、剣術LV2


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 レベルが上がったのはとても嬉しい。しかし、今はそれどころじゃない。ステータスを開いている場合でもない。大きな問題が起こったのだ。


「グオオオオオオオオオオオオオォォォォォ!!」


 それが今、ドスドスと後ろを追いかけてきている50階のボス、地竜アースドラゴンだ。


 行きで四天王が倒したはずだが、時間が経って復活したようだ。


「一旦休憩させてくれ! ……ゼェ、ゼェ……5分だけ待ってくれー!」


 いくら頼んでも言葉が通じないので無意味だ。アースドラゴンは無限の体力で追いかけてくる。


「このままじゃ戦う前に体力が尽きて死ぬ……! やるしかない!」


 アースドラゴンは複数人で倒すのが普通らしい。さすがに四天王ともなれば1人で倒せるとグオーガは自慢していた。自慢していた割に4人で倒していたけどね。


 決心して反転する。追いかけてきたアースドラゴンとすれ違いざまに魔剣テンペストブリンガーで斬りつける。


「グガギャ!?」


 突然の反撃で驚いたのかアースドラゴンは立ち止まり、こちらを睨みつけながらうなる。前足から少し血が流れている。


「グルルルルル……」


 力を溜めたアースドラゴンはこちらに突進を始める。


 ここで俺は、賭けに出ることにした。ちょうどMPが1000以上あるので、あのスキルを使ってみる事にしたのだ。


「テンペスト!」


 魔剣テンペストブリンガーからアースドラゴンに向かって猛烈な強風が吹きつける。アースドラゴンの巨体が風で浮き上がる。


 ジタバタともがくアースドラゴンに対して無数の真空刃が追撃する。


 スパスパと切り刻まれるアースドラゴンは空中でバラバラになった。


「なんて威力だ……」


『レベルアップ! レベルが95になりました』


「経験値も美味しいな。レベルが20も上がってる。あっ! あれは宝箱!」


 アースドラゴンの死体が消えて、代わりに宝箱が出現していた。行きの時は出なかった宝箱だ。


 宝箱を開けると動物の牙のような短剣が出てきた。しかし、ただならぬ雰囲気を感じる。


「パイソン、アイテムボックス」


 アイテムボックスに短剣を入れ、鑑定結果を見る。


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【ドラゴンファング】

 ランク:A

 攻撃力:+600

 スキル:切れ味向上


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 この短剣は切れ味がとても良さそうだ。武器として使えるし、モンスターの素材を剥ぎ取る時にも使えそうだ。


「良い武器が手に入った!」


 その後は、どんどん敵が弱くなるので何も苦労することなく1階までたどり着いた。50階から1階に降りるまでの間にレベルが上がった。


『レベルアップ! レベルが100になりました』

『スキルレベルアップ! パイソンのレベルが2になりました』


 そして、レベルが100に到達した時に、パイソンのレベルが上がった。


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 ラング 17歳 男

 レベル:100

 HP:1000(10✕100)

 MP:1500(15✕100)

 攻撃力:100(1✕100)

 守備力:100(1✕100)

 器用さ:100(1✕100)

 素早さ:100(1✕100)

 知 性:100(1✕100)

 幸 運:100(1✕100)

 スキル:パイソンLV2、貧乏LV10、剣術LV2


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 パイソンLV2の説明を見てみた。『新たにfor文を使用できる』と書かれていた。実際に試さなければどんな効果なのかは分からないので、魔都デモンズパレスに帰ったら試してみよう。 


 ダンジョンから脱出して深呼吸すると、今まで生きてきた中で一番美味しい空気だと感じた。

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