Lで鬼のあたしが女の子だけのギルドを作ることになって百合色の人生になったお話

百合厨

序章『リリズ・プルミエ』

序章 『リリズ・プルミエ』



 あたしは、どこにいても孤独だった。

 意識したのは、中学一年生の頃。あたしが女の子しか愛せない人間だって。

 それからの日常は、女の子が男の子と話しているのを見るだけで虫唾が走るようになった。


 中学二年生にあがると、世界中があたしに敵意を向けているのかと思うようになった。

 誰も、あたしを肯定してくれないから。

 相談した教師には曖昧な返事しかもらえなかったし、両親もあたしを腫れ物でも扱うように接するようになった。


 学校に通わなくなるのも、必然といえる。

 一日中部屋に引きこもって、オンラインゲームに興じる毎日だった。


 あたしはゲーム内でも女の子を演じる。

 分身のあたしは一撃で強いモンスターを葬り去る屈強な女戦士で、ギルドも作った。

 当然ながら、男子禁制のギルド。


 頑張って広告した甲斐があって、作りたてのうちは評判がよかった。ギルド内は、昼夜問わずさまざまな女の子がチャットをしたり、一緒に冒険に行ったり、賑わいをみせる毎日だった。


 けれど、楽しい瞬間は長く続かなかった。

 まるではじめから存在していなかった蜃気楼のように。あれだけいたギルドの女の子は、日に日に数を減らしていた。


「……アリャさんも除名、っと」


 あたしはぼそりと呟いて、マウスをカチカチと動かす。

 昨日まで一緒に狩りをしていたギルドメンバーを除隊させたのだ。


 理由は一つ。

 チャットで、彼氏のことを話していたからだ。


 もう、うんざり。

 ゲームの世界に逃避しても、女の子たちは男性に目を向けるばかり。

 女の子だけのギルドを作ったところで、あたしの理想が叶うことはなかったのだ。


 あたしがギルドメンバーを除名していた理由を聞かれたので、男の子の話題を出していたから、って答えると。

 あたしの思想についていけなくなった、と次々に言われた。閑古鳥が鳴くのはすぐだったのだ。


 中学三年生になった春。

 あたしの建てたギルド"リリズ・プルミエ"はメンバーがあたしだけになっていた。


 どこにいっても、孤独。

 消えてなくなりたい。


 せめて……。恋人じゃなくてもいいから。同じ思考の女の子たちと会話してみたかったな。

 

 眠りにつく前に、布団の中でそんなことを考える。

 まるで今際の言葉だ。

 いや、似たようなものか。あたしは死人と同然なんだ。誰からも肯定されず、周囲には反吐が出そうになる人間たちばかり。


 意識が途切れていく。


 あたし、アイカは深い深い眠りに誘われた。


 そして、次に目が覚めた時。


 ――あたしは、鬼だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る