ボッチな俺が美少女エルフを召還した話、ききたい?

@aneq

プロローグ 行きつけの喫茶にて

「なあなあ、一つ話をしていいか?」


 よく晴れた気持ち良い景色と、温かい春の日差しが入ってくる俺ら行きつけの喫茶店。

 親友の拓海たくみが明るい窓側の席に座るなり、いきなり切り出してきた。

 とても話したくてたまらないらしく、こちらに向けた顔は横から差し込んでくる日光よりも輝いている。

 とは言っても、こんなことは日常的だ。

 なんとなく入店した古本屋に前から探していた漫画をお手軽価格で見つけたことから、はたまた自動販売機の下に小銭を見つけた、なんて小学生の自慢のような話も彼は楽しそうに、そして誇らしそうに話す。

 「いやいや言うほどのことじゃないだろ」と突っ込みはするけれど、俺はそんなこいつの「どうでもいい」自慢話をきくのが実は楽しみだったり、するんだな。

 見ているこっちまでわくわくさせる表情をみると今度はどんなことを話し始めるのか気になってしょうがない。

「それで、なんなんだよ」

 俺が早く話を始めるよう促す。

 拓海は一瞬だけ何かためらったように、もしくは決心するかのような表情になり口を開く。

 この一瞬の間が俺には気になったが、相手の口が開くのに気付き意識をそこに向ける。

 いつものように話し始めた友人の話をきき、耳を疑った。

「お前に会う前、俺が美少女エルフを召還した話をしてもいいか?」

「なんだ?最近ハマってる漫画か?」

 俺が聞き返すと、拓海は「えーと」と言って次の言葉を考えていたが、彼よりもさきに俺の口から言葉が出る。

「もしかして、そんな夢を見たとかじゃないよな?」

 こいつ最近めっちゃ可愛い彼女できているし、その娘似の妖精と夢で会った、なんて事なんじゃないよな?

「まあ…そういうとこかな」

「どういうことだよ」

 俺の言ったことは正しいのか?

 そもそも若干答えになってない。会話が嚙み合っていない。

 今日の拓海はどこかおかしい。

 通常運転時は俺が一つ相槌を打つだけでマシンガントークを連射するのに。

「少し、長い話なんだ。中編小説レベルの」

 だんだん重い口調になっていっている。大丈夫かこいつ。

 しかも、中編小説レベルだったら口で話すと結構長いだろ。

 しかも中編なんて具体的な。

「いいから話せよ。聞くからさ」

 ツッコミを飲み込んで代わりに吐き出した俺の言葉に「ありがとう」と言って本題に入る。

「お前も会ったことあるんだよ。そいつに」

「うわ、まじかよ。なんでそのとき言ってくれなかったんだよ」

 また拓海の顔は一瞬だけ暗く、そしていつもの顔に戻る。

 この一瞬さえなければいつもの友人だ。

 少しした後、俺の大切な友人、拓海は通常運転に戻りまくしたてるように話し始めた。


 さて今回の話題はどのくらい下らなくて、面白いのだろうか。

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