第198話 家庭内カースト
198話 家庭内カースト
「お邪魔します」
善は急げ。なにかを考えついたらしいミーさんに連れられ、俺はアカネさん宅へとお邪魔していた。
何度か来たことのあるここだが、何気に一人でというのは初めて。サキがいないだけでここまで緊張するとは。
「そんな畏まらなくて大丈夫ですよ。もうそれなりに付き合いのある仲なんですから」
「いやまあ、そんなんですけどね。どうにも一人だと落ち着かなくて」
「ふふっ。和人さん、いつも落ち着いてるイメージありましたけど結構緊張しいなんですね」
「え? 俺そんなふうに見られてたんですか……?」
痛い俺のどこを見ればそんな落ち着きのあるクール系に見えるのだろうか。まさかミーさんなりに俺の緊張をほぐそうとジョークでも言ってくれたのか?
分からない。まあ知る術もないので考えるだけ無駄だな。
そう気持ちを切り替えて。靴を脱いでから廊下を進みリビングへと辿り着く。
「ぐごぉ……っ」
「あ、この爆睡してる人は踏んでいいですよ。なんなら蹴っても。ていっ」
「んごっ!? いっつ……うえ?」
「あら、起きましたか。あと一週間くらい寝ててもよかったのに」
「ちょ、えっ!? なんか寝起きにいきなり辛辣じゃない!? って……あれ? なんでお義兄様がここに?」
「ど、どうも。お邪魔してます」
くあぁ、とあくびをしながらミーさんに蹴られたところを摩るアカネさんの姿は、まあなんとも情けない。
すらりと細く白い脚は一切隠そうとせず、下に履いているのはショートパンツだけ。上もブラの紐が見えてしまうほどに首元の丈が余ったダル着のシャツ一枚だけを身に纏っており、まさに休日で完全オフなお姉さんといった感じ。これでもそれなりに格好が成立してしまうから美少女さんは恐ろしい。
というかアカネさん、まだ俺のことお義兄様って呼ぶのか。一応俺とサキの仲はもう明かしてるわけだし普通に名前呼びでも……
(いや、待て? もしかしてアカネさんってあの時のこと覚えてないのでは……?)
アカネさんは俺とサキの関係に気づいていながらも、普段そのことを一切口にしなかった。バレたというか明言されたのはこの人がべろんべろんに酔ってた時で、あの後ミーさんと話してる時もずっと爆睡してたし。もしかして自分がカミングアウトしたこと、知らないんじゃ?
「んん? もうお義兄様はおかしいかぁ。これからは和人君って呼ぶね〜」
「あ、はい」
そんなことはなかったらしい。大方ミーさんがあとからお説教兼報告をしたというところか。
まあ逆に名前呼びもこれはこれで違和感が凄いけれど。そのうち慣れることだろう。
「んで和人君がなんでうちに? ハッ……! まさかサキちゃんという彼女がいながら私たちのことを!?」
「なんでそうなるんですか! 私が呼んだんですよ!」
「み、みみみミーちゃんが彼女持ちを連れ込んで!? あわ、あわわわ!!」
「一旦マジで黙りましょうか……。肋へし折りますよ?」
「ひえっ!?」
ギロッ、と鋭い眼光で睨まれて萎縮したアカネさんはその場で小さく縮こまると、ゆっくりと道を開ける。
「さ、行きましょうか。こっちです」
「はは……」
二人の家庭内カーストってこんな感じなのか。
いつもはミーさんが振り回されているように見えていたが。どうやらしっかりと手綱は握っていたらしい。流石だ……。
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