第75話 アカネさんからの召集

75話 アカネさんからの召集



 誕生日記念配信を終えた、次の日の夜。私のスマホが鳴った。


「? なんだろ……」


 作業の手を止め、通知画面を見る。するとメッセージを送信してきていた相手は、アカネさんだった。


『サキちゃ〜んっ! 突然ごめん! ちょっと相談あるんだけどいい〜?』


『はい。どうしたんです?』


『いや〜、少し遅くなっちゃったけど、サキちゃんに誕生日プレゼントを用意したの! それで、ぜひ明日にでも私の家に取りに来てくれないかなぁ〜って!』


『た、誕生日プレゼントですか!? そんな、悪いですよ!!』


『悪いも何も、もう用意しちゃったんだも〜ん♪ サキちゃんのためのものなんだから、受け取ってもらわないと私が困っちゃう〜』


「えぇ……」と、思わず声が漏れた。


 いや、勿論嬉しい。本当に、とっても嬉しい。でもそれ以上に……怖い。


 アカネさんのことだから、絶対に普通じゃないのは分かってる。まだそれがびっくり箱とか、マイナス要素のものならいいけど……あの人のことだ。平気で凄く高いものとかを渡したりしてきても不思議じゃない。


『あの、一応聞きたいんですけど……誕生日プレゼントって、どんなのなんですか?』


『んーとね、サキちゃんが凄く喜んでくれそうで、かつ楽しんでくれそうなもの! しかもお義兄様も私も、みんなでハッピーになれる最高なものだよー!!』


 み、みんなハッピー……? なんか、怪しい宗教勧誘とかネット通販とかで使いそうな単語が出てきたけど、本当に大丈夫なのかな。というか、もしかしてこのプレゼントって物じゃない? みんなで楽しめるって言葉を信じるならパッと浮かぶのはゲームとかだけど、なんか違う気がする。もしゲームなら、先にそう言ったうえでどんな物かを伏せて誤魔化す言葉を並べると思うから。


(う〜ん……。でもそうなると、候補が残らない……)


 まあでも、せっかく用意してくれたものな訳だし。断ったりするのは絶対に失礼で、してはいけないこと。ここはもう、アカネさんを信じるしかない!


『わ、分かりました! じゃあ明日取りに行きますね!』


『よぉし、そうこなくっちゃ! あ、ついでにお義兄様も連れて来れる?』


『え? あー、はい! 連れて行きます!!』


『OK! あと私の家に来るにあたってなんだけど、私の可愛い可愛いマネージャーさんが車運転できるから迎えに行ってもらおうか? 前お義兄様と来てた時レンタカーだったし、またお金使わせるのは悪いからさ!』


『そ、そんな! 大丈夫ですよ! 誕生日プレゼント貰って、そのうえお迎えもなんて……』


『いーからいーから! 遠慮しないでー!』


『……じゃあ、お言葉に甘えます』


 なんかこれ以上遠慮を続けるのも申し訳ないなと思って、私はこの家の住所をアカネさんに送った。なんだか人に住所を教えるのはドキドキしたけど、アカネさんなら信用できる。


『ふふふっ、楽しみにしててねサキちゃん! 絶対に喜んでもらえるものだから!!』


『はい! 楽しみにしてます!』


 そうして、明日のお昼一時にこの家の前に、マネージャーさんに車で迎えに来てもらうことが決まった。念のためにそのマネージャーさんがどんな人なのか聞いてみると、どうやら女性で、とても綺麗な青髪の人らしい。性格面のことは聞いていないけれど、怖くない人だといいなぁ。


 それにアカネさんには、少し聞いておきたいこともある。もしマネージャーさんが怖い人だと多分緊張しちゃって、私は″あの話″を直接その場で話せなくなるかもしれないし。別にこうやってスマホのトーク画面で話すこともできるけど、内容的にもどうせなら直接、ちゃんとアカネさんから話を聞きたい。


「……サキ? 言われたとおりミルクココア淹れてきたけど、何楽しそうにしてるんだ?」


「あ、おかえり和人。ねぇ、突然なんだけど明日────」

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