第15話 二人でお風呂タイム2
15話 二人でお風呂タイム2
時は遡り、数分前。先に和人を浴室に行かせた私はリビングで一人、悶えていた。
「なんで私、あんなこと言っちゃったの!? 一緒にお風呂に入りたいって……まるで痴女みたいじゃない!?」
決して、和人と共に入浴することが嫌なわけじゃない。だけどどうしても、一緒に入れる喜びよりも恥ずかしさが勝ってしまう。自分から誘っておいてなんとも情けない……。
「って、こうしてる場合じゃない! 早く用意しないと、和人がのぼせちゃう!!」
いつまでもくよくよしているわけにもいかないと思った私は、とりあえず急いで自室へと移動することにした。
幸い、裸で入るのは恥ずかしいときちんと伝えてあるわけだから何かを着て入ることはできる。問題は、何を着るかだ。
「普通にTシャツを着て……っていうのは違うよね」
背中を流してあげるだけならそれでもいいかもしれないが、身体を洗った後には浴槽に浸かることになるからなんか変だし、多分和人も期待を裏切られてガッカリしてしまうと思う。
きっと和人のことだから私のために露骨にそういう感情を表に出したりはしないだろうが、そんなのは私自身が嫌だ。
「と、なると……」
残された選択肢は、あと二つ。水着を着るか、バスタオルのみで行くか。
どちらにせよ私の中でめちゃくちゃ恥ずかしいことに変わりはないが、裸で行くよりはまだ少しだけマシに感じる。
水着の場合。私が持っているのは高校で使っていたスク水のみ。本当ならもっと可愛いのを着て行きたかったけど、海に行ったりする機会が無かったため持ち合わせがない。
でも、選り好みしていられる状況でもないのだ。もう一つの選択肢であるバスタオルは、もう実質裸のようなもの。ドジな私は何かのアクシデントでそんな布切れ一枚、簡単に吹き飛ばしてしまう気がする。
つまりもう、スク水を着ていくしか……
「仕方ない……覚悟を、決めるしか!」
私は引き出しの奥深くからビニール袋を取り出し、その中に入っていた水泳バッグの中からスク水を引っ張り出した。
黒の全体像に、胸元には白色のアップリケのようなものに書かれた「赤波」の文字。高校時代、これが恥ずかしくて何度水泳の授業を休んでやろうと思ったことか。
だけど、今はこれを剥がしている時間はない。私はそのまま着ている服をその場で全て脱ぎ、スク水に脚を通した。
「えっと、あとは上に引っ張って……」
するりと脚が通ったことで一先ずサイズ的には問題がないと一安心し、腹部から胸部へとゆっくりとそれを引き伸ばしていく。
だがここで、問題は発生した。
「あ、あれ!? うそっ!?」
ぎゅぅっ、みちみちみちっ。
なんとか肩に布をかけることに成功したものの、既にもう布は伸びきってはち切れそうなうえ、胸部が半分以上も……露出していた。
「いたっ! 痛い痛い痛いっ!?」
圧倒的誤算。高校から大学にあがる春休みと大学一年生の間に何故か謎に成長した、おっぱいである。
高校時代ではEほどしかなかったバストは、急成長を遂げて今やG。腰回りなどはさほど変化していなくとも、胸がここまで大きくなってしまっては収まるはずもなかった。
現に圧倒的に足りない布は私の胸の半分ほどしか隠すことはできなかったし、そのうえ引っ張られすぎた肩紐のせいでお股が締め付けられてかなり痛かった。
「おのれおっぱいめ……まさか、こんなことになるなんて……」
最悪なことに、スク水の選択肢はこれで消えてしまった。後に残ったのは、大きなバスタオル一枚で身体を隠し切るという危なげなものだけである。
だが、そうこうしている間にも時間は過ぎていく。もうやけになった私はバスタオルと着ていた服を持ってとりあえずと浴室前の脱衣所へ移動し、バスタオルを裸体に巻きつけた。
「っ、ぅ……! これ、えっちすぎるよぉ……」
鏡に映った自分の姿を見てみると、やはりバスタオルではかなり心許ない。
胸に長さを使わざるを得ないせいで太ももから下は全て見えているし、ほんの少したくし上げてしまえば下半身が全て出てしまう。
そのうえ上半身だってタオルを巻く形状上胸の谷間がしっかりと強調されたようになってしまっている。
恥ずかしい。もう今すぐにでも和人にごめんなさいしたい。でも……
「こんな調子じゃいつか、飽きられちゃうかもしれない……」
私より魅力的な子なんて、きっとこの世に五万といる。それに比べて和人は優しい上に見た目までカッコいいのだから、これまでも私と違って色んな子から好かれていたはずだ。
私はこれからも、ずっと和人と一緒にいたい。一緒に暮らして、大学を卒業したら、いつかは……
「頑張れ、私。和人の彼女で、あり続けるために……!」
よし、とその場で自分に喝を入れた私は、鏡で身だしなみを整えて最終チェックを終えてから、半透明な浴室の扉の前に立つ。
「大丈夫……私なら、大丈夫……!!」
そして勇気を振り絞って、その扉を小さくノックしたのだった。
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