花束

@eniaoji

第1話


電車の窓から外を見る

空はオレンジから紫へのグラデーションでもうすぐ今日が終わることを優しく教えてくれていた

腕時計を確認する

余裕をもって間に合いそうだ

鞄からチケットを取り出して見つめた

今日は彼女の夢が叶う日

今までの努力が報われる日

彼女に花束をもって会いに行く

おめでとうを伝えに行く

手紙を添えて花束を渡そう

約束を果たそう

口元が緩みそうになるのを必死でこらえた

駅を出ると雨が降っていた

傘は持っていない

雨は嫌いじゃない


傘をささずに小走りで花束を予約していた花屋さんに向かう

幸せだった

心がとても暖かかった

こんなに嬉しい事は人生で初めてだった

幸せで嬉しくて

自然と足は早まった

信号のない交差点を幸せいっぱいで突っ切ろうとした

すぐそこまでトラックが来ていることも気づかないまま

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