第112話 予想外の?
いつものHONDAのお店にやってきた。
はるなっちは、今回はCB400SSに乗っており、カブを勧めに行くからカブ乗ってくるのかと思った、と話すと。
「最近400ccに乗ると、長距離移動するときはカブだと怖くなってきちゃって」
などとおっしゃる。
これは、スーパーカブ110だと田舎の幹線道路で車と同じスピードで走れないとこがあるかららしい。
「そこの第二空港線走ってる時に「なんか、今日のスーパーカブは他の車に追いつけないし、伸びが悪いわね。調子悪いのかしら?」なんて思ってたら周りがすごいスピードで走ってるだけだった、ってことが結構あって。カブで走る時はなるたけ田舎道を選ぶようになってしまったわ」
そういうものなのか。
元々400ccに乗っていると、そういうのがわからないものである。
お店には私たちの方が先に着いたようで、いつもの営業の茂木さんと会って、今度バイク乗る子がいて、という話をしていると。
「PCXとかいいですよ」
と言われて。はるなっちが
「スクーターはバイクじゃないからダメです」
などと言っている。
カブも似たようなもんだろうに。と思うけどそれ言ったら面倒くさそうなのでやめておいた。
トリシティとかには楽しそうに乗ってたくせに、なぜかスクーターは許されない乗り物的なことをたまに言っている。
「なんでスクーターダメなの?」
「ブレーキが自転車と同じでしょ?あれに慣れると咄嗟に足ブレーキ使うの忘れてしまうじゃない。今後、バイク沼に落とし込んでいくためにも、足ブレーキの着いてるバイクにしておかないとダメなのよ」
と私の従姉妹をバイク沼に落とす気満々なのがわかった。
「通学のために、車がないからスクーターで、っていうのは有りだと思ってるわよ。
その時はPCXとか最高だけど。
今後ステップアップするなら、最初はギア付きがいいわよね」
「でも、カブにはクラッチレバーないよ、それにペダルのギアものすごく使いにくいし」
「それは、さくらがいきなりスーパーフォアとか乗ってるからよ。
カブからステップアップすると、クラッチレバーも自然と身につくものなのよ」
かなり偏った認識のような気がする。私は今でも、カブに乗るとクラッチレバーを無意識に握るし、シーソーペダルを足で跳ね上げてブゥオンっ!って感じになる時あるんで、割と苦手。
茂木さんにスーパーカブの種類をいくつか見せてもらうように交渉していると、四葉叔母さんとしのぶちゃんがやってきた。
ちょっと挨拶してたら、もうはるなっちがしのぶちゃんの手を引っ張ってカブエリアに連れて行っている。素早い。
まず目の前にあるのは、緑色のクロスカブというもので
「これはね、私の乗ってるのと同じエンジン使ってるのだけど、サスストロークが少し長くしてあって、オフロード寄りになってるの。
ちょっと乗り降りがしにくいかもしれないけどワイルドでかっこいいでしょ。
これはね、スーパーカブが日本製造に戻ってきたときに・・・」
はるなっちの解説が長くなるが、しのぶちゃんは興味深げに聞いている。
大丈夫かな。
「そして、これはスーパーカブの上位種、スーパーカブ125。
初代のイメージを残したカモメハンドルに、レトロの雰囲気が素敵でしょう。
ただ、おしゃれすぎてボックスつけるとかっこ悪くなりそうなのが欠点かしらね。
スマートキーだしディスクブレーキだし、いいもの使ってるけどその分お値段もするかな。あと、燃料タンクが小さくて・・・」
ここからマニアックな話へと入っていく。
「その125を改良して、往年のハンターカブ、CT110を彷彿とさせるオフロード寄りのヘビーデューティーなのが、この新型ハンターカブ。
ボックスも似合うし阿蘇をこれで走ると注目度あるわよ。
農作業手伝う時に畦道走っても様になるし。
この名前の元になったハンターカブは、実は初代の名前だけで、そのあとは・・・」
ここからハンターカブの歴史的解説が始まる。
へえ、本当にハンターが使うためのスーパーカブが作られてたんだ。
はるなっちの話もたまに面白いのがあるので聞き逃せない。
横で見てる茂木さんが苦笑いしながら
「私の出る幕ないですね」
と言っている。
しかし、ハンターカブやらスーパーカブ125はお値段がそれなりにする。
クロスカブは現在製造が終わってるので、ここにある在庫か中古しかないとかんなとか。買うなら今ですよ、などと茂木さんが攻勢を仕掛けてくる。
スーパーカブのまえで、しばししのぶちゃんが悩んでいる。
「私にはさっぱりなんのことかよくわからないけれど、バイクの詳しい説明とかも聞けてよかったわ」
と四葉叔母さんは言う。
いや、多分ハンターカブの歴史とかは購入にあんまし関係ないと思うんですけど。
125ccのスーパーカブとハンターカブは値段が高いのでちょっとね、とおばさんは言う。はるなっちが「私の乗ってるのの倍くらいするし」などと言ってるし。
そういう話を聞くと、はるなっちのスーパーカブ110ccは、かなりコスパがいいのかもしれないわね。
しのぶちゃんは無言で跨ったり降りたりして、クロスカブの雰囲気にちょっと「いいかも」とか言ってたところ。
「中古の方には別のも有りますよ」
と茂木さんが新たな提案をしてくる。
クロスカブの色違いがあるらしいので、それを見にいく。
新車の在庫は緑色でジープみたいな色だったけど、見せてもらったのは薄青い感じでちょっとおしゃれ。
あ、この色いいな。
私のスーパーフォアにもこんな色があればいいのに。
と思ったけど、なんとなく似合わない気もしないでもないかしら。
しのぶちゃんはしばらくその青いのを見回していたけれど、ふと隣に置いてある別の中古バイクに視線が向いてる。
それは、青いタンクの丸目のバイクで、私のスーパーフォアっぽいネイキッドって言うやつかしら。
250ccは選択できないのでは
と思って見ると、
バッタの産卵管みたいなナンバーステーの先にはピンクのナンバー
「これ、なんcc?」
横にいたはるなっちに聞くと、
「これはCB125R、125ccよ。カブと違って水冷だからパワーもあるし見た目も250ccくらいあってかっこいいでしょ」
確かに、未来的な感じがあってかっこいい。
バッタの産卵管みたいなのは、最近のバイクの流行りみたいなので細かく突っ込むのはやめようと思うけれど。
でも、私のスーパーフォアと比べると気になるわ。
「フェンダーレスキットというのがあって、あれ外すこともできるのよ」
「それ違法改造じゃないの?」
「大丈夫よ。ただし、泥除けついてないから雨の日とかひどいことになるわね」
「私のスーパーフォアでもそうなるよ」
「その点、スーパーカブは雨の日でも安心なのよ」
などと話していると、しのぶちゃんはそれに跨ってみたりしてる。
クラッチかちゃかちゃしたり、ブレーキ踏んでみたり。
ぐるっと回って、値段を確認して。
「お母さん、これがいい」
「「え?」」
私とはるなっちがハモった。
すっかりカブを買いに来たとばかり思ってて、中古か新車のクロスカブで悩んでると思っていたら予想外のところに。
「そんな大きいので大丈夫?」
「これがかっこいい」
「免許はオートマ限定じゃないの?」
「これです」
とはるなっちにしのぶちゃんが免許を見せている。
「あ、これなら大丈夫ね。
でも、なんでこれに?」
「一目惚れです」
迷いのない目だわ。
「一目惚れかぁ。でもバイク選ぶのにそういうの大事だしね」
とはるなっちはその選択を受け入れる感じ。
四葉おばさんは
「中古でも整備とか問題ないんですか?」
と茂木さんに聞いてて、茂木さんが認定中古車なので保証がどうとかそんな営業マンらしい話をし始めた。
今までははるなっちが全て説明してたので出番がなかったのだ。
「通学で使うなら、キャリアつけてボックスつけた方が良いですよ」
と茂木さんが言いつつ、さりげなく箱を勧めている。
箱、ネイキッドに箱。
私のセンスでは「カッコ悪い」と思うのだけれど。まぁ、これを選ぶのはしのぶちゃんだから問題ないか。
と思っていると私に
「さくらさんは、スーパーフォアに箱つけてないですけど、問題ないんですか?」
と聞かれる。
はるなっちは、通学の時は箱をつけており、取り外し可能にしているので、今日は取り付けてない。本人も「箱は便利だけどスタイルを損ねるから」と言っているのであまり付けたくはないのだろう。
私は、紐で縛り付けてるとなんとかなるからつけてないだけ。
そんな話をすると。
「じゃあ、いっとき無しで乗ってて、後でつけることできます?」
と茂木さんに聞いている。
茂木さんは「最初につけておいた方が楽ですよ」と言って、キャリアだけでも先に取り付けさせようとしている。
さすが営業マン。
取り付けを一緒にやると工賃おまけできますよとかなんとか。
結果、
「これで通学する」
と言う話になり。
その場で購入手続きを行うことになってしまい、バイクは軽トラで受け取りに来るとかそんな話までしてる。
カブを勧めたはるなっちは
「いいわね、いきなりCB125に乗るとか、将来有望じゃない」
と喜んでいる。カブ仲間にならなかったけどいいの?
と聞くと
「HONDA仲間になったからいいのよ」
などと言う。
これ、ヒナっち聞いたら文句言ってこないかしら。
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