種子島編

第98話 種子島に到着して

種子島 西之表港に降りてみると、

なんか思ったより普通のとこだった。


まぁ日本全国、田舎の離島の港町なんてどこも一緒なんでしょうけど。

もっと、なんかこう、「種子島」って感じかなと思ったんだけど。


「どんなのが「種子島!」なのよ」


とはるなっちに突っ込まれたが。

街中に火縄銃が置いてあるとか、どこに行ってもロケットが転がってるとか。高校生がスーパーカブで通学してるとか、ガンヴァレルがいるとか。

と言うと


「影響受けてるのがだいぶ偏ってるわよそれ、熊本人は普通に家で馬刺し食ってて、幻獣退治に士魂号が歩いてるとか思われてるくらい、偏見で見てるだけよ」


と言われてしまった。まぁ半分冗談なのだけれど、屋久島ほどのインパクトがないのがちょっと寂しいだけ。

あと種子島というと安納芋くらいかな。


なんて言いながらも、まずは鉄砲館へと向かう。

やはり種子島といえば鉄砲よ。


いろんな種類があるのもびっくりしたし、ネジの概念がなかった時代に、その仕組みを解明した技術者の人がいたとか。

そこに悲しい物語があったとか、そんな話を見ると何事も犠牲がつくものなのだなぁ

なんてしみじみ思ってしまったり。


それにしても、火縄銃から薬莢式の鉄砲になぜ進化しなかったのかしら。

そのへんは火縄銃ならではの利点があったからなのかしらね。


そんなことをふと思ったりしたけど、日本人ならではの「鉄砲道」みたいなの作って縛ってしまった感じもあるのかもね。


と勝手に思いつつ。


そこからは北回りで種子島を回っていく。

しかし、道中期待した景色ではなかった。海沿いを走りながら、海を眺めながら走れるかと思ったんだけど。

屋久島みたいに海岸ギリギリを走る道ではなく、割と内陸を県道が走ってたりして「つまらん」と言ってはるなっちが駄々コネはじめた。

そこで、一度休憩した後にはるなっちが海岸沿いを走ると言うのでみんなでついていくと、だんだん狭い道に入っていって。

最後には謎の港っぽいとこにたどり着いてしまったり。


海はとても綺麗で青くて澄んでいて、天気がいいのもあって素晴らしい景色の良いとこだったけれど。


ただ、行き止まりなのでそこからまた引き返す手間があったりしたわね。

ちょっと秘密の港を見つけたみたいで楽しかったけど。


防波堤を歩いたりしてると、フナムシがカサカサ走り回ってたり。

あとは、釣り人が放り投げていったのか小さなフグの干からびたのが転がっていたり。


哀れなり


間違って釣り上げられた挙句その辺に捨てられるとは。

その辺にあった棒で突いて海に戻してあげたが、干からびたのが戻って生き返るわけではない。


堤防から下を覗き込むと、カラフルな魚が普通に泳いでる。


「あれ熱帯魚屋さんとかでみるやつじゃない?」


黄色と黒の縞々、あと青くて濃いブルーの小さいのとか。

ハタタテダイ?っていうのかしら。

海が澄んでて海底まで綺麗に見えるから、そんな美しい魚が見られるのだろうけど。

防波堤に腹這いになって海を眺める女子高生4人というのも、なんかシュールな光景。

高藤先輩は面白がって撮影してたけれど。


まぁ寄り道にはなったけど、海を眺めたりして楽しかったからいいわね。


今度はひなっち先頭に走っていくことになって、喜志鹿崎灯台に向かい、はるか彼方に見える鹿児島を拝み。


「鹿児島が見えるのね、泳いでいけそう」


「多分、昔それやった人いたと思うわ」


「記録に残ってないんですかね?」


「普通こっそりやるでしょ」


などとどうでもいい話をしつつ。

流刑地とかそういうので離島は使われるから、脱走したらその時点で捕まるでしょうし。


なので泳いでわっ立ったとしても記録に残ることはないのでは、という話。

よほど追い詰められないと泳ごうって気にはならないかもね。


そこからついで、メヒルギの群生地を見て。


「これ、屋久島にもあったマングローブの林でしょ。なんか誰か川沿いに植えたんじゃないのって感じのところよね」


「一応自生地だから、勝手に生えてたと言うことらしいけれど」


マングローブ、と言う割にはまあそんなもんですか、と言う印象。やはりそう言うのは西表島とかいかないと難しいのかもしれない。背丈ほどのあるシダの林を抜けて、マングローブの中をカヤックで移動するとか、そういうのは沖縄くらいじゃないと無理なのよね。


そこから天女ヶ倉公園へ向かい、私はそこで、船の中でみんなに言ってたように

「秋子さんから教えてもらった、父の知り合いに挨拶をしてくる」

と言うことを伝え、別行動をすることになる


佐藤くんに言われてた「合わせたい人がいる」ということで、その話を船の中でしたのだけれど


「私たちはついていったらダメなの?」


とはるなっちに言われるも


いや、多分精霊とか竜とかだから。


とは言えず

「挨拶、顔合わせるくらいだから、すぐ終わるよ。

終わったらすぐ追いつくから」


と言って誤魔化す。嘘ではない。


皆は一度西之表へと向かい、そっから種子島の西を通って長浜を目指し、そこから下を回ってホテルへと向かうことになった。翌日宇宙情報センターを堪能する予定。


長浜で昼まで遊んでるから、と言われたのでそこで合流すべく私はダムへと向かうことに。昼食はみんなで一緒に食べたいのでそれまでには用事を済ませたいところ。


別れてバイクで走りながら、佐藤くんに頭の中で話しかける


「なんでダムに行くの?」


「ダムを作るには、その土地の龍神の許可がいるのです。

その後のケアを見える人たちが行うのですけれど、今回はその役割を桜さんにしてもらおうということです」


「そんな話聞いてない」


「秋子さんも言ってませんから聞いてないでしょうね。

桜さんが今後竜と関わっていけるのか、その試験みたいなものです」


「いきなり実地試験とか厳しくない?」


「これくらいできないと、今後が心配と思われたのでしょう。

今回は挨拶ですから問題はないでしょう」


と言われ、現地に着いたら人型を使って佐藤くんを実体化させて欲しいとも言われる。

もらった人型、ウエストポーチに入れてたと思うけど。

どこかに仕舞ってないかしらね。


そもそも、種子島、離島にもダムってあるんだ、と素直に感心したりして。


目的地はすぐ到着して、誰もいないのを確認する。


「ここは人払されてます。

桜さんがくることは僕経由で伝わってますから、ここの龍神が人払いしています」


「見えなくても人払とかできるんだ」


「近寄りたくない気配、とか感じたことありません?そんなふうに人が無意識に来たくなくなあるような手法を使うのです」


へーとか思いつつ。


ダムの上に来てから人型をウエストポーチから取り出す。

確かに、人間の形をした紙人形なのね。


白い竜と両親が豚になった少女が出てくる映画で見たことあるような気がする。


それを、秋子さんに教えられた通りに口に咥え。


そして佐藤二郎くんをイメージし


「顕現せよ」


と唱える。

同時に、そこに佐藤くんが姿を表してきた。

目の前に、さっきの人型が口から落ちたとこらへんに現れる。


あ、咥えたままだといけないって確かにそうなのね。

多分、私が体のどこかに噛みついたような感じで佐藤くんが実体化してしまうのだろう。


立っている姿は背が高く私より10センチ以上は高いので180近くあるんじゃないかな。


白い清潔な長袖シャツと黒いスラックス。

私の学校の男子が来てる制服に似てる。


灰色の髪色に灰色の目。

北欧風の顔立ちと、太陽の光の下で見ると、またキラキラして髪色とか綺麗なのね。


ちょっと見惚れてしまったが、


「それで、今日会わせたい人ってどこに?」


と聞くと


「ほら目の前に」


と言って、佐藤くんが横に体をずらす。


すると、その背後にでかい目があるのがわかり。


鱗、つの、青い体。


順に視界に入ってきて、


ダム湖の中から、巨大な青い竜が頭をもたげている姿が見えてきた。


初めて竜の顔を見てしまい、一瞬体がすくむ。

獰猛な獣のようであり、一口で飲まれてしまいそうな様子もあり。


小さい時に森の中にキャンプに行った時、

一人迷ってしまい木々の中で彷徨っていた時に感じた、一人ポツンと自然の中に置かれた時に感じた恐怖を感じる


目の前の獣に反応しているのではなく、自分を超えた自然の大きな力に恐れを感じるような。


その青い竜は私をじっと見てから、佐藤くんに視線を移し


「この子が、春彦の子か」


と話しかける。喋るというよりはテレパシーという感じだけど。

なのに、山全体にこだましてるような、エコーがかかっているように感じてしまう。


「ええ、次からはこの人が巡回者として任を受ける予定です」


巡回者?何それ聞いてない


「そうか。秋彦の血筋なら良い仕事をしてくれるであろうな」


勝手に話が進んでるけど、これ大丈夫?


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