第79話 春は屋久島、種子島?

「屋久島!行く行く!」


はるなっちに、春休みのツーリングについて目的地を「父の知り合いがいる屋久島はどう?」と言う話をすると、すぐにのってきた。

ここはバイク部室と言われる、物置部屋であるけれど、机と椅子があるのでたまに集まって話す必要がある時に使われている。

ただ寒い。

エアコンが効き始めるまで極寒の状態なので外で太陽にあたってた方が暖かいくらいの状態だったりする。


今回は、バイク部の「部長、副部長」などを決めておく会議のために借りているのでここの部屋には集まれる範囲の2年生がやってきていた。

会議はすぐに終わった


「部長って、今来てないけど進学クラスの阿部でいいよな」


「じゃあ副部長は?」


「今日は欠席だけど田中でいいんじゃない?」


「全員進学クラスというのは良くないのでは?」


「俺たち普通のクラスのメンツより先生に信用されるやん。どうせ名義だけやけよかろ」


と勝手に決められてしまい、阿部くんと田中くんは後日、今日欠席したことを後悔するのであった。


大体、バイク部の部長は会議の時に欠席したものがなる、という伝統があるらしい。



そんな感じで、全会一致で決定し、お開きに。

その後鍵を返しに行くために「じゃあ次期部長と同じ進学クラスの大津、返しといて」となぜか隣のクラスの山本君に言われ私が鍵を最後持っていくことになったので。

ついでにはるなっち、ヒナっち呼び止めて春休みのツーリングについて聞いてみたのだった。


冬美叔母さんと会った後に小泉さんから


「屋久島に、お父様のバンドメンバーで、ベースをされていた東雲 秋子様がいらっしゃいまして。

そのかたが、お父様の契約者と共に現在過ごされています。

一度、そのかたに会いに行かれると良いでしょう」


と言われたので。

春休みに南に行こうと計画してたから、ついでに進めてみたわけだ。

私一人で屋久島行っても楽しくなさそうだし。


「バイクで行くなら、フェリーよね。船旅で3時間か」


ヒナっちはちょっと憂鬱そうな顔をしている。

そもそも船が苦手という話。


「3月だったら、私2ケツできるからあんた飛行機できて、私が二人乗りで屋久島連れて回ろうか?」


「いやよ、自分で走ってるからバイクは楽しんじゃない。

いい、酔い止めのめば大丈夫」


ということで二人とも行く気になってくれたので、別の日の放課後に屋久島行きの計画を立てることになった。


小泉さんから渡された資料などをみると、東雲さんはバンドの中でも最年少で、今40歳くらい。父たちと10歳近い年齢差があるらしい。

父のバンドはベースが東雲さんで2代目、初代の人はサポートメンバーとして最初から入っていたのでいつの間にかバンドメンバーと扱われたけど事務所を変わる際に大人の事情でその後を手伝えなくなり。それで東雲さんが入ってくることになったとか書いてある。


まぁ特に重要な意味なさそうなとこだけど。

その東雲さんが、冬美叔母さんが言ってた父の「契約者」と共に過ごしているらしいので、まずそこで契約者と会い、東雲さんから父の仕事について聞いてくることが目的となっている。

その後、私がその契約者の方と一緒に父の後を継いで遺産をもらうのか、継がないで遺産を手放すのかが決まる。

別に遺産はなくてもいいけど、父の話をもっと聞きたいというのはあるし。契約者とかいう謎の人も、父と一緒に仕事をしてたみたいだから、話を色々聞いてみたいし。

それにしても、契約者、という人の名前については小泉さんも冬美おばさんも教えてくれなかったけど。

まぁ行けばわかるということなのかな。


高藤先輩も大学に入学するために忙しいかな、と思って声を一応かけてみると。


「行くに決まっているじゃない」


と即答だった。

大学は入学するまで案外暇らしい。


そして、はるなっちは「せっかくなら屋久島行くなら種子島も行こうよ」という話をしてきたので、どうやらそんなルートになる感じ。


4人で集まって、屋久島、種子島ツーリング計画が動き始める





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