第51話 冬の阿蘇パノラマライン
「じゃあ、私は明後日には熊本帰るから、そん時また連絡する」
とヒナっちは言って手を振ってる。
私たちは横浜駅からリムジンバスに乗って羽田空港まで行くことにした。
電車だと荷物転がして歩くの面倒だし。
乗り場も何もわからないので、全てまたヒナっち任せ。
それに、前日はろくに寝てないのでバスに乗って寝て移動しようという考えでもあるけれど。
しかし、東京は違う国みたい。
横浜も私から見たら東京と変わんないわ。
こんなところで、父と母は出会い、結婚したのか。
そんな両親が若い頃に過ごした街の空気感は、田舎とは全く違った。
羽田、品川、目黒、その辺りしか歩いてないけど、また街によって空気感が全く違うのも感じられた。
父と母の結婚前の話まで聞けるとは思ってなかったので、かなり収穫はあったのだけれど。
母について、余計に謎が深まってしまった感じ。
熊本に帰ってからは、いっときお母さんの情報集めになるのかな。
そちらは高藤先輩任せなので、何か空港でおいしいお土産でも買って帰らないと。
横を見るとはるなっちはすでに熟睡中。
私もちょっと寝ていこう。
そして羽田で買い物して、彷徨って、飛行機に乗って。
飛行機の中でも、ほぼ寝てたので何にも飲んでない。
タダでもらえるドリンクを飲み損なうと、なんか損した気分になるけれど。
熊本に無事帰ってくると、なんとなく気が抜けてしまう。
空港にははるなっちのご両親が迎えに来てくれてて、私も乗っけてもらうことに。
道すがら、私のこととかを話しながらだったけど、両親が不在で親戚もいないとかでかなり不憫な子だと思われてしまったらしく。
「何かあったら、私たちにも言ってきてね」
と別れ際に言われてしまった。
はるなっちは意外と私のことを話してなかったらしい。
まぁ友人の身の上なんてそんなに親に話さないか。
久々の家に帰ってきた、って感じで山の空気が気持ちいい。
とりあえず家の中に荷物を放り込んで、
まだ太陽は高い、けれど、夏の午後5時くらいの低さに見える。
あと3時間くらいで太陽が沈んでしまう感じね。
羽田を12時に出てきたので、今の時刻は午後3時
ガレージにいくと、私のスーパーフォアが待ち構えている。
ここ数日、自分にとって色々なことがあったけど、その始まりを作ってくれたのはこの子のおかげなのだ。
横浜を別のバイクで走ったけど、その時もいつも自分のバイクと比べてて。
なぜか余計に自分のバイクが恋しくなるもので。
早速冬用のジャケットで身を固め、ちょっと山へ走りに行くことにした。
ガレージの外に転がしていくと冷たい空気がまとわりついてくるのを感じてしまう。
外気温はここで10度くらい。山の上だと、5度くらいかしらね。
今日の冬の装備だとマイナス気温の時でもなんとかなったから問題ないでしょう。
最近はプラス気温なだけで、十分暖かく感じてしまう。バイクに乗る前は0度とマイナス1度にあまり違いを感じなかったけれど、バイクの上では体感で3度くらい違う感じがあって、1度の違いできていく服を変えていくくらい慎重になってしまった。
久々にエンジンをかけると、低い排気音とヒュヒュヒュヒュという音が聞こえてくる。
あ、この感じ。
XSRは単気筒なので割と振動があったけど、この4気筒ならではの滑らかな振動と複雑なエンジン音。
いっときその音を堪能して。
外の冷たい空気を胸いっぱいに吸い込んでから、ギアを入れ走り出した
やはり400ccはパワーがある。
特に山沿いに入ってくるとそれを感じる。
5000回転、6速のままで大抵の峠道は登っていけるのだから。
冬になると、ケニーロードは立ち入り規制が始まる。
日陰では道路の雪が溶けないこともあるかららしい。
なので、阿蘇山へ登っていくことに。
真冬なのでバイク乗ってる人がまずいない。車も少ない。
南阿蘇側から登って谷を眺めると、刈り取り終わった水田に水が張られてるとこがちらほら見えてくる。
何かそういう農法なのかと思ってたら、水資源を保ための村の方策らしく補助金も出るらしい。
みんな地下水使ってるから、水資源がなくなるのは問題だものね。
私の家で使ってる水道も、区画ごとに掘られた共有の井戸から汲み上げたものを使っている。なので、年に1回数万円を支払って管理費を払っているのだけれど、年数万円で水使い放題といえばそんな感じ。
そこで「この水は100年かけて土の中を通って磨かれた水なのだよ」と自慢げに言ってる人がいたけれど、100年も水って腐らないものなの?
誰かが適当な事言って、それがキャッチフレーズになっただけなのではないだろうか。
そなんことを考えているとトンネルが近づいてきた。
ここが怖い。中に垂れた水が凍ってる時があるのだ。だが、今日はプラス気温なので大丈夫。夏はトンネルの中入ると「さむ」っと思うけれど、冬になると「あったかい」ってなるから地下の温度変化は少ない、という話は本当なんだと感じられる。
今日はそのまま古房中を通り草千里方向へ。
そこの道端で写真を撮ってパノラマラインを降りていく。
枯れススキが視界に広がり、どこまでも続く茶色い毛布みたいな草原が遠くから見ると柔らかそうで面白い。
所々、牧草のために刈り取られてしまっててパッチワークのようになってるけれど、それはそれでまた面白い光景になってたりする。
ああ、やっぱり街中を走るより、こんな草原を走る方が気持ちがいい!
冬の冷たい風でも問題ない。
暑い夏も寒い冬も、それなりに厳しいとこあるけどバイクは楽しい。
横浜ではXSR155でもいいかな、と思ったけれど、
阿蘇で生活するなら、楽しむならやっぱり、私はこのCB400スーパーフォアが一番ね。
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