明日の食卓 微糖

@Talkstand_bungeibu

第1話

「明日の晩御飯、何にしようかね」

「…うん」

「聞いてる?」

「…うん?」

「聞いてんのって」

「あぁ、ごめんごめん」

「いやごめんって言いながらスマホ見返すんじゃないよ」

「聞いてたって。ごはんでしょ?」

「それそれ」

「いやなんでもいいよ。別に」

「別にって明日はそっちの料理当番じゃんか」

「えー?明日何日?」

「明日15日で奇数だからそっちだよ」

「大体このやり方もずるいと思うんだよな」

「やり方?」

「このシステムがよ」

「ずるいってなにがさ」

「一ヶ月31日でしょ?割合的にはこっちがやる機会多いんじゃない?」

「…まぁまぁまぁ」

「月末と月初めは連続になるしさ」

「いーじゃん。料理好きなんだから」

「それとこれとはまた別なんだけどなぁ…」

「ほら、冷蔵庫何があるか見てきてよ」

「ちょっと今無理だわ。レポートしてきて」

「…しゃーないな。よっと」

「たのんますー」

「まず、もやしね」

「はいはい」

「次がもやし」

「うん」

「あと、もやし」

「…うん」

「あとここにあるのが、もやし」

「いったん待って」

「どした?」

「なんでこんなうちの冷蔵庫はもやしあんの?」

「いやこの前スーパー行ったら安かったからさ」

「もやしは年中安いんだよ!セールとかじゃないんだよ!」

「いいじゃん別に。腐るものじゃないんだし」

「腐るんだよ!賞味期限一日とかしか持たないんだよ!」

「しょーがないじゃん。閉店ギリで少なくなってたから慌てて買っちゃって」

「慌てるもんじゃないんだよ!次の日スーパー行けばまた売ってるんだよ!」

「ま、今あるのはぐらいかな」

「グライィィイィィ」

「どしたのそんな奇声あげて」

「…あまりの事にだよ。もやし炒め一択だよこんなもん」

「うぃー」

「あ、戻ってきた」

「おつかれ」

「おつおつ」

「山口どうだった?家族元気だった?」

「普通かな。それより見てこれ」

「なんだこれは」

「…なんか見た目グロいけど」

「あんこうあんこう。山口が産地やからさ、お土産に持ってけっていわれて」

「鮮度的に大丈夫なん?」

「大丈夫でしょー、パックもしてあるし」

「しかしこれは…」

「難題だな…」

「何が?」

「冷蔵庫見てくりゃわかるよ」

「どれどれ」

「あいつら全部ぶちこんじゃえば?大量消費でさ」

「合うのかわかんないじゃん。それに最悪の組み合わせで入れた瞬間猛毒のケミストリーになったらどうすんのさ」

「なんないよ多分…。合うかどうか聞いてみたらいいじゃん」

「すげーな。もやししか無かったわ」

「アンコウ、合うと思う?」

「わかんない」

「え」

「山口いたけど一回も食べた事なかったからさ」

「……」

「……」


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