オンラインdeオリンピック

カリーナ

おもてなし五輪

 来る2021年、待ちに待ったオリンピックが開催される。

 治療法が確立していないウイルスの蔓延により、対面での会食はお偉いさんたちの特権となっていた。

 そんな中、経済的貧困、ウイルス鬱、将来が見えない不安に自殺を辞めない国民たちを励まそうと、ある大臣が発言する。

「オンラインで、オリンピックを開催してはどうでしょう!」

「オンラインでオリンピックだと?どういうことかね?」

「つまり、リモートで、オンラインオリンピックを開催するということです。」

「素晴らしい!そんな発想をどこから考えついたんだ?」

「おぼろげながら、浮かんできたんです!」

 かくしてオンラインオリンピックの開催が決定された。

 まず、インターネット回線を国中に配置。

 勿論、税金をふんだんに使って強いネット環境を作り上げる。

 次に、諸外国の選手たちにオンラインオリンピックの意を説明する。

 観客がいなければ盛り上がらない、やる気が起きないといわれることを考慮して、莫大な税金を使って誘致した。

 最高峰の食事を提供し、一流のホテルに滞在してもらう。

 外国人選手たちはVIPな扱いを受け、日本に入国することが出来た。

 税金はどんどん無くなっていき、やがて税率を上げることを可決した。

「皆さんの為なんです!こうしてオンラインオリンピックが開催されれば、国は元気になり、皆さんも元気になるでしょう!これこそが、お・も・て・な・し!」

 税率が上がったことにより、また従来のオリンピックが中止されたことによって発注されていたあらゆる工事、サービスが停止することなり、倒産する会社が相次いだ。

 自殺者が増えたことは言うまでもないが、それもオンラインオリンピックが開催されるまでの我慢だと全議員が信じていた。

 来る開催当日。

 議員たちは、各々がホテルの部屋で待機し、巨大なスクリーンに映し出された史上初のオンラインオリンピックを楽しんでいた。

 政府に忖度したマスメディアは予め作っておいた、国民たちが自室でオンラインオリンピックを観戦し、楽しむ様子をテレビやニュースで報道した。

 現実世界では、街は荒廃し、商店街は専らシャッター街と成り下がり、感染者が蔓延した民間病院はゾンビ屋敷と化していた。

 携帯会社が示したインターネット回線代を払える国民は少なく、ごく一部の上流階級、そして議員たちのみがオンラインオリンピックを楽しんでいた。

 国民たちのことはつゆ知らず、無事オンラインオリンピックを開催し終え、国民を励ますことに成功した暁に彼らはまた宴を再開したのであった。

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