【バフ】しかできない無能ちゃん。クランから追放されたおかげで、クラン全員を【バフ】する苦行から解放される。自分一人だけ【バフ】したら、なんか最強でした。
―24― ニーニャちゃん、新しい仲間と出会う!
―24― ニーニャちゃん、新しい仲間と出会う!
昨日は馬車で直接ネネリの屋敷まで帰ったため、素材の売却をするためだ。
あとは魔物の依頼もあればいいな、という思惑もある。
「ホントにすごいですね……」
ギルドの倉庫にて、アイテムボックスから出てくる大量の
「ふふん」
とニーニャはいい気になる。
ネネリにかかれば、この程度の魔物を狩るぐらい造作もないことなのだ。
ちなみに、今回の討伐でネネリの冒険者ランクがEからDにあがった。
「今日はより強い魔物の討伐をいたしましょうか」
ネネリがそう提案する。
「そうですね。ネネリちゃんなら
「ええ、そうですわね……」
余裕だったのはニーニャのおかげなのだが、ニーニャに褒められて悪い気がしなかったネネリは素直にうなずくことにした。
どうせ訂正したところで、ニーニャは勘違いしたままだろうし。
「なにかいい依頼でもあればいいんですが……」
依頼の書かれている張り紙を眺める。
様々な魔物の一覧、魔物の発生場所が書かれている。
「うーん、
今の自分たちにぴったりな魔物討伐が中々見つからない。
それもそのはずでネネリとニーニャだけでは攻撃のバリエーションが少なかった。
まぁ、ニーニャがいればどんな魔物でもゴリ押しで解決しそうな気がしないでもないが……。
という具合にネネリが頭を悩ませていた時。
「ねぇ、あなたたち」
後ろから話しかけられる。
振り返ると女の子がいた。
赤みかかった髪の毛。髪をお下げのようにまとめており、髪の先には目立つリボンがついている。服装も派手なフリルがついており、冒険者の装備というよりおしゃれを優先したかのような格好だ。
「なんでしょうか?」
振り返りつつネネリがそう言うと、少女がこう口にした。
「このヴァラクちゃんの下僕にしてあげてもいいわよ!」
少女はふふんと鼻を鳴らしていた。
「え、えっと……」
ネネリは言葉を失う。
ちょっとなにを言っているか理解できなかった。
「ねぇ、あなた方ランクはいくつ?」
「Dですけど」
「わたくしもDですわ」
「ふふんっ、ヴァラクちゃんはCランクよ! ねぇ、すごいでしょ」
「わぁーっ、すごいですねー」
「ふふっ、もっとわたしを褒め称えなさい!」
「わー、すごーい!」
「あなた良い子ね。特別にヴァラクちゃんの下僕にしてあげる!」
このままだとニーニャが下僕になってしまいそうなので、ネネリはニーニャを引っ張って自分の方へ引き寄せる。
「ニーニャ、あまり変な人と関わってはいけませんわよ」
「ちょ、ヴァラクちゃんは変な人じゃないし!」
少女は両手をあげて抗議をする。
「えっと、そのですね……」
ネネリはニーニャを守るように前に進み出て少女に対峙する。
「その下僕ってのはどう意味でして?」
「下僕は下僕だし! そんな言葉も知らないの?」
「ニーニャ、あっちに行きましょうか」
これ以上関わってはいけない人だと判断し、ネネリはニーニャの手を引く。
「ちょ、どこ行く気よ!」
と聞こえるが、それを無視して歩く。
「いいんですか?」
「ああいうのは関わらないほうが吉ですわ」
と、無視して冒険者ギルドの外へ行くが、
「なんで無視するし! Cランクのヴァラクちゃんが下僕にしてあげるって言っているのよ! 普通断らないし!」
と、言ってきたり、
「ねぇ、待ってってば! せめて話だけでも聞いてってば!」
と、言ってきたり、
「お、お願いだから、話だけでも聞いてよぉ……」
とうとう涙声で
人通りの多い道で泣くもんだから、さっきから周囲の視線が痛い。
「ネネリちゃん、話だけでも聞いてあげようよ」
「そうですわね……」
ここまで必死になられたら、流石に無視するわけにいかなかった。
◆
「ふふんっ、やっぱりヴァラクちゃんの下僕になる気になったのね!」
話をしようと近くの食堂まで来ていた。
「……帰りますわよ」
やっぱり話を聞こうとしたのは失敗だったかなぁ、とネネリは立ち上がる。
「ちょ、待ってってば! すみません、調子にのりました!」
「ネネリちゃん、謝っているしもうちょっと待ってあげようよ」
「……次、下僕と言ったら帰りますからね」
「は、はい」
と、ヴァラクが頷いたので、ネネリはもう少しだけ話を聞こうと、自分を納得させる。
「そうだ、話をする前に自己紹介をしませんとね。わたくしはネネリと申します」
「ニーニャです」
「ヴァラクちゃんはヴァラクちゃんだし!」
「それは知っていますわ」
「え? な、なんで!?」
散々自分のことを「ヴァラクちゃん」と呼んでいたので自己紹介せずとも、名前がわかるのは当然だった。本人はその自覚がないようだが。
「それで、話ってのはなんですの?」
「それはヴァラクちゃんのげぼ……じゃなかった!」
下僕といいかけた瞬間、ネネリが無言で立ち上がったのでヴァラクは慌てて訂正する。
「えっと、ヴァラクちゃんとパーティーを組んで欲しいんだし」
「パーティーですか」
まぁ、ちょうどパーティーの人数がもう少し欲しいと思っていたところではあるが。
てか、パーティーを組みたいなら、最初からそう言えばよかっただろうに。なぜ、下僕なんて言ったのか。
「ちなみに、得意のスキルの系統はなんですの?」
「回復職だけど」
回復職はパーティーに一人は必須とされている。
ネネリもニーニャは回復職ではないため、パーティーになってくれるならありがたいが。
「それも占星術師よ! すごいでしょ!」
どや顔でヴァラクがそう宣言した。
「それは……」
確かにすごい。
回復職は主に3つあるとされており、神や天使の力を借りる神官、薬草からポーションを造る錬金術師、そして星の力を借りる占星術師。
占星術師は絶対数が少なく珍しいとされている。
とはいえ、すごいと口にすれば調子に乗りそうなのでネネリは言わないことにした。
「聞きたいんですが、あなたCランクとおっしゃっいましたよね」
「ええ、そうよ!」
「Cランクの回復職なんて引く手数多だと思うんですが、なぜわたくしたちとなんでしょうか?」
ニーニャもネネリもDランクと高くはない。
ヴァラクがCランクなら、もっとランクが高い冒険者とパーティーが組めるわけで、わざわざランクの低い人たちと組むメリットがない。
「ほら、ヴァラクちゃんってかわいいじゃない!」
と、ヴァラクが胸を張ってそう宣言した。
「はぁ」
また、帰りたくなってきたネネリである。
「そのせいで前いたパーティーが崩壊してしまったのよね」
「どういうことですの?」
前後の文脈が繋がってないせいで、話がよく理解できない。
「えっと、ヴァラクを巡って男たちが争いパーティーが崩壊した的な」
「そ、そうですのね……」
色恋沙汰が原因でパーティーが崩壊したってのはよく聞く話だ。
「それで女しかいないわたしたちに声をかけたと」
「そうそう! もう男は懲り懲りだから女の子だけのパーティー探していたんだけど、意外となくてさー。回復職だから一人で狩りに行くわけにいかないし困ってたのよね~」
話を聞く限り、性格に難はあるが悪意はなさそうだし問題はないかとネネリは判断した。
「どうします? ニーニャ」
「いいんじゃないかな。悪い人じゃなさそうだし」
「ニーニャがそう言うならそうですね。パーティーを組みましょうか」
「わーありがとー! いや、ホントかわいいって罪だよね~」
「はぁ」
ホントに大丈夫だろうか、と心配になったネネリだった。
「ちなみに下僕ってのはなんですの?」
「前にいたとき男たちに下僕と呼んでいたらみんな喜んでいたからそのときの癖みたいな?」
「はぁ」
本当に大丈夫かと、再度不安になったネネリである。
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