雨の午後

 今日は、なんとなく身体が重い。硝子が入っていない窓の向こうに走る雨の線を見やってから、異世界の『本』に転生してしまった自分の身体を確かめる。

 トールが暮らしていた日本海側のあの町では、湿気の所為か、軽い紙表紙の本は大抵、平置きの積ん読にしておくと表紙が変な方向に反ってしまっていた。物理法則はほぼ同じだから、この世界でも、『本』であるトールを構成している『紙』が湿気を吸ってしまったのだろう。

 息を吐き、トールの『持ち主』であるサシャの方に顔を向ける。雨で薄暗いからだろう、計算をしているサシャの顔色は、普段以上に悪く見える。無理をさせないようにしないと。小さく頷くと、トールは表紙に文字を並べた。

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