百合女と女装男子

結麻

第1話 出会い

私は女の子同士の恋愛、百合を見るのが好きだ。



ユリの花のように儚げで、繊細で、傷付きやすい。


消え入りそうな、そんな花のような恋愛に私は、惹かれた。




ーー入学式で出会った子は、まるで二次元の世界から出てきたかのような女の子だった。

靡いた髪からは、ほんのり甘い匂いが漂い、艶のある唇、微かに火照る頬、キメの細かい肌、全てが作り物のような美しさがあった。

男に媚びるような嫌らしさを一切感じさせないその子に釘付けになる。


「陽菜」


そんなリアリティのない女の子が誰かの名を呼ぶ。


「陽菜っ!!」


綺麗な瞳がまっすぐ私を捉えていた。

彼女が口にする名は私の名前だ。


「私……?」


間の抜けた表情をしていただろう。ぼそっと呟いた言葉に彼女は反応する。


「そうだよ、わからない?」


呆れた顔をしても絵になるな。


「よく見て!」


そう言って私の肩に手を乗せ、強い力で引き寄せられる。改めて見ても綺麗しか感想は無いけど、さらにまじまじと見つめていると、半信半疑ではあったが分かった気がした。


「あ、飛鳥……?」


幼馴染の名前を口にする。


「もー。そうだよ! 式終わりにって待ち合わせしてたじゃん」


「いやっ、でも、声も違うし……。えっ、性別も変わったの?」


「声は外見に合うように練習してたの。性別はそのまま、男」



今までずっと一緒にいた幼馴染の容姿がいきなり変わって、しかも美少女で、訳もわからず足の力が抜けていく。

必死に座り込みになるのを耐えて、足を前に進める。


「帰る」


よくわからない感情を抑え込み、一言を振り絞る。

脱力した足を動かし、彼女か彼か分からない幼馴染を置いて帰宅した。

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