彼女と僕

バブみ道日丿宮組

お題:早すぎた計算 制限時間:15分

彼女と僕

 天才がいるというのならば、きっと彼女がそうなのだろう。

 僕? 僕は一般人でしかない。両親ともに普通。親戚に特別な人がいるわけじゃない。

 彼女には両親と呼べる人はいない。

 ある施設で産まれた異端児……らしい。

 今でも施設で定期的に検査を受けないと死ぬかもしれないとのことだ。

 そんな彼女と出会ったのは、小学校高学年。コンビニで支払いをしようとした時がはじまり。

 いくら出せばおつりの数が少なくてすむか……そんな些細なことだった。

「相変わらず成績に偏りがあるね」

「言葉を覚えるのが苦手だからね」

 彼女と一緒に今は期末試験の復習を行ってる。

 僕はどれも平均点。秀でて飛び抜けてるものはない。

 彼女はといえば、国語、歴史という文字がメインの教科は赤点なのに、物理、数学という数値がメインのものは満点という具合。

 彼女の保護者はこれでもいいとのことなので、あまり口には出せないが、

「もう少し覚えたほうがいいんじゃない?」

「歴史とお話を知ったところで何も役に立たないよ」

 復習だというのに彼女は最初からやる気がない状態で、ずっと僕に話しかけてた。

「一般常識ってのがあるでしょ」

「あったとしても知らなくて困ることはないよ」

 でもねと、一息。

「数学はどこでも役に立てるよ。あの人があと何秒でくしゃみをするとか、信号機がいつ変わるのかとかね」

 どれも役に立ちそうじゃない。

「信号は特に面白いよ。いったん計算すれば、歩みを止めるってことがないからね」

 それは面白そうだ。

「あとは……そうだね、先生の髪の毛が何歳でなくなるとかさ」

「それは考えないであげてほしいかな」

 ただでさえ、ハゲ教師と言われてるのになくなる未来を告げられるのは酷でしかない。

「君も施設に入ってみればわかるよ。いかに歴史ってやつが不必要なのか」

「うーん、ないかなぁ。実験とか恐いし」

 彼女から聞く施設の中身はとても人がやるようなことじゃない。

 人体実験とはいわないが、どれもサイコに近い。

 そんな施設に入ってみれば何かが変わるかもしれないが、僕は普通でいい。

「ほら、そこ間違ってるよ。公式を使って」

「え、わかった」

 彼女は今日も回転してた。

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彼女と僕 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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