父さんへの想い

バブみ道日丿宮組

お題:憧れの螺旋 制限時間:15分

父さんへの想い

 誰にだって目標にしたい人物は1人くらいいるだろう。

 それは歴史的偉人であったり、芸能人であったり、ネットで有名だったり。他にもいろいろな場所で名前が知れ渡ってたりする。

 私はといえば、死んだ父親がそれにあたる。

 まず、この世界には魔法というのが存在してることはみんな知ってると思う。それは移動手段であったり、短縮化魔法であったり、攻撃魔法であったり、と千差万別で。

 一般的に学校で学べるのがほとんどを占めており、オリジナル魔法というのは数少ない。少ない理由としては同じ血を引いた人間しか使用できないのが理由との1つとしてある。あとは……獲得条件が凄く難しいとかだ。

 私の場合、難易度の問題が主。

 父親が使ってた魔法は、螺旋を描くもので、水潮を起こしたり、雲を引き裂いたりと応用力がかなり高い。極めれば、魔獣そのものを螺旋の渦で攻撃したりもできるとのことだ。

 魔獣の血を飲んだりすれば、会得がしやすくなるとかの噂もあるが、とてもじゃないが真似したくない。好き好んで気持ちの悪い魔獣の血を誰が飲むのだろうか。

 実際それを試して死んでしまった人間もいるくらいだ。まともじゃないことが証明できてる。

「はぁ……」

 魔法はイメージが主な成分。想像は力なりというやつだ。

 螺旋というのは、ぐるぐると回ってるから凄くイメージは簡単なのだが魔法は具現化しない。魔力を込めても込めても光弾が飛ぶばかりで曲がる気配がない。

 やり方が違うのかもしれないと何度か趣向を変えてみたはいいものの、ただ疲れるだけで現実味がない。

 父さんはいったいどうやってこの魔法を取得したのだろうか。

 名前が売れてるわけでもなく、なにかをしたわけでもない。魔法の名前だけは知られてるのだけどね。

 父さんではなく遠い祖先が開発してれば、親戚が使えたりもするのだろうけど……そんなことはなく父さんの子どもは私だけだ。

 なら、使えるのも私からで、未来の私の子どもがそれに該当する。

「駄目だなぁ」

 原っぱに横たわると、花のいい香りが鼻をくすぐった。

 ここらへんは平和だなぁ。

 もっと都市部にいくと、野党が出たり、魔獣が出たりするのだけど。

 危険に身を寄せて学ぶ技術もあるという。父さんはそういったことで強くなったのだろうか。母さんの話を聞く限りではそんな感じではないみたい。

 もう少し話をすれば良かったかな。

 物心ついた頃から私は父さんが苦手だった。

 そのため会話をするということがなかった。

 死んでから言葉をかけるという愚かな行為しかできてない。

「……」

 考えるのはよそう。死んだ人間はいくら願ったとしても帰ってこない。

 それは魔法でも無理だ。

 奇跡は魔法では決して起こらないのだからーー。

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父さんへの想い バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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