日々

バブみ道日丿宮組

お題:悲観的な狂気 制限時間:15分

日々

 結果的にいえば、復讐は完了したといえる。

 もっとも誰にとっての復讐なのかによるところではあるが、クラスメイトが死んだことに変わりない。

「……」

 死んだという事実は、教室内に暗い感情をちらつかせる。

『半分が悲しい、半分が嬉しいのではないか?』と個人的に思うが尋ねるわけにもいかない。

 人が死んだという事実は暗い話だ。

 テレビみたいに『ねぇねぇどんな気持ち? 嬉しい? 悲しい? 関係はどうだったの? 死ぬ前になにか話したの?』とか聞くわけにもいかない。

 好奇心というのはあるけども、実行犯と疑われてしまっては元も子もない。

 誰がやったかわからないから話題性があるのであって、誰かわかってしまえばそれはただの事件でしかない。

 恐怖というマークは刻まれてないと誰も理解しないのだから。

 これからの学校生活は多少なりとも疑心暗鬼を含めたいびつな世界になると思うと、心がウキウキした。

「……」

 今の教室はどっとした空間ではあるが、後に多少は元に戻るだろう。

 その時になって全員が良かったと思える結末を作り出してみたいものだ。まぁそんなことをしたら、奇異の視線に晒されるだけだろうが。

「……ナイフが貫通してたらしいよ」

「指が反対側に曲がってた」

「眼球が赤く染まってる」

「肌の色が白くなった」

 ぼそりとつぶやいた言葉が連鎖して空間を支配してく。

 とても面白い。

「あなたはどう思う?」

「ただ死んだだけでしょ」

 僕はそっけない態度をとる。

 口端が歪むのを抑えるのが少し大変だった。

 反応が面白くなかったのか聞いてきた生徒は他の生徒の元へと歩いてった。

 耳を澄ませてみれば、どれもこれもが同じものばかり。

 つまらない。

 誰か1人くらいは、『せいせいした』くらいいえないものか。

 まぁ……僕が言えないことを教室の誰かがいえるとは到底思えない。

 ここにいるのは死んでしまってもいい人だらけ。

 誰もそれを理解してない。理解しようとすらもしない。

 ただの人にそのことを求めても無駄なのはわかってる。

 けれど、少し残念だ。

 もう少し人は利口であると思ったのにな。

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日々 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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