第16話
ジャバジャバジャバジャバと誰もいない教室に音が鳴り響く。
その音の出どころはもちろんの如く僕の目の前に転がっている女狐のカバンからだ。
ポケットから泥を入れた袋を取り出してカバンに振りかけていく。そして、そのうえから水筒の水をかけていく。
いや、確かにこれじゃかなり甘いお仕置きかもしれない。
だがこれはしっかりと理由とメリットがあっての行動であることは理解してほしい。
まず、女狐のカバンを汚すことによって経済的負担もかかる。しかし、これは親が払うことになるだろうため、あまり期待できるメリットでは無い。
次に、いじめられているという精神的負担。まあ、今までのが強烈すぎてそこまで効果は発揮しないだろうけれども。
そして最後に、周囲に女狐がいじめられていることを認知させること。
これは、一見何のメリットもないように見えるが、一度よく考えてみればわかるはずだ。
例えば、クラスメートがいじめられているとしよう。そう言った場合は、周囲の生徒は一生懸命になってその子を庇うのだろうか。
いいや、違う。確かにそのような生徒も一定数はいることだろう。しかし、そのような生徒よりもよっぽど多いのは、見て見ぬふりを貫く傍観者となることだ。
よって、いじめられているということが周囲に認知されることになれば、女狐の周りには誰1人も残らず、孤立してしまうことだろう。
そうすれば大地も女狐に騙されずに済むわけだ。
僕はそんなことを考えながら、泥水をかけていった。
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