第87話
「ねぇ~どこに行く予定なの~?」
「とりあえず体育館に行ってクラス単位でやるダンスを見る予定だ」
タンス部のダンスを見た後だと迫力を感じないかもしれないが、文化祭のために素人の一生懸命に努力をしたダンスもいいものだろう。特にオタダンスを注目している。あれはキレが必要だが、あまりみないダンスたから素人とでも注目を集めやすい。昔はこれをやるだけでオタクだと言われバカにされたが、今はこれを知っていると文化祭でやるところが増えて、教えを請われて尊敬されやすい。
「三年生のダンスはおすすめだよ~。文化祭で三年間ダンスをやっているクラスもあるし~」
それは楽しみだ。三年間やっているってことはそれだけキレのあるダンスもできるんだろう。もしかしたら難易度の高い櫻坂のダンスも披露するクラスもあるかもしれない。
「そうか、ちょうど今行く時間は三年生のクラスが多いみたいだ」
俺はしおりを確認しながら言った。軽音にも興味かあるな。うちの学校も軽音学部は百人の部員がいると言われている。つまり文化祭で発表する人たちはクオリティか高いということだ。東葛も軽音は人気があると菅井に聞いたし、進学校の生徒は何事も一生懸命に努力するから期待はしてもいいだろう。
「楽しみだね~。東葛高校はダンスの見せ物が有名なんだよ~」
東葛は勉強もするが自由が売りの学校で、文武両道をもっとうにしてるから文化祭も部活も力をいれるのだろう。この間はうちの高校の野球部が公式戦で負けてたし。確かその時は県ベスト8まで残ったんだよな。勉強できる奴は努力もするから部活でもそれなりに結果が出るのだろう。
「楽しみだな。さてそろそろ出るか」
「そうだね。結構長い時間いたし、そろそろダンスが始まる時間だね」
「最後に私とチェキ取らない~?」
「いや着替えたから無理だろ」
「もう一回着替えるから大丈夫だよ~」
そう言って菅井は着替えに行った。俺は二人分のお金を払った。ドリンクだけじゃなく昼も奢ったのだ。ここはそんなに高くないからそこまでお金を使わないですむからな。美海は俺に現金を渡そうとしたが、デートしてくれたお礼だというと美海は顔を真っ赤にしながらそれなら分かったよと言った。
するとさっきのコスプレに着替えた菅井が来た。俺達をみてなにかを察したのか、菅井は目を細めた。すると腕に抱きついてて胸を当ててきた。おいやめろ男共がこっちを殺さんばかりの視線を一斉に向けてくるから。視線になれてるって言ってもこんなに大人数は慣れていないんだよ。
「じゃー上村さんお願い」
「分かった。撮るよハイチーズ」
菅井は満面の笑みでピースしながら写真を撮った。俺はどんな顔をしているのだろう。引きつった笑みを浮かべてなければいいが。俺はチェキを受けとる。どうやらちゃんと笑顔に撮れているようでほっとしたが今度は私の分とか言ってもう一回撮ることになった。
「後ろから抱きつくようにして~」
「これ以上針のむしろになりたくないんだが」
「もうすでに針のむしろだから問題ないよ~」
一回言い出すと菅井は引かないからな。押してダメなら諦めろだ。俺は菅井の後ろにまわり優しく抱き抱える。ちょっとした悪戯をするかと思い頭を撫でた。すると予測してなかったのか菅井は顔を真っ赤にした。その瞬間を撮られた。
「最後のはビックリしたけど嬉しかったよ~。まさかこんなサービスをしてくれるなんてね~」
やべ美海のこと忘れていた。恐る恐る美海を見ると菅井のほうを向いてハイライトオフの目と無表情になっていた。ヤンデレがでてる。だが美海は森田を好きと言った手前かなにも言ってこなかった。菅井に嫉妬するぐらい俺のことを想ってくれてるのは嬉いんだが、その目はやめろ怖いから。昔見たアニメのヤンデレを思い出される。まぁ美海だから危害は加えないから大丈夫だろうが。
菅井はチェキを受け取りそれをしまいに裏に行った。
「ねぇー正弘くんなんで頭を撫でたの?そんなに頭が撫でたいなら私が撫でさせてあげるのに。そんなにあの女の頭がいいの?ねぇ私じゃ満足できないの?ねぇ教えてよ」
ハイライトオフの状態で俺に迫ってきた。怖い怖すぎるよ。あの天使みたいな笑顔を見せる美海はどこにいったの?ここまで美海が嫉妬深いとは思わなかった。ここまで嫉妬するってことは俺は森田についで好かれてるってことか。
「なんで急に笑ってるの?そんなにあの女のことが好きなの?」
「いや、美海に嫉妬されるぐらい好かれてるのが嬉しくてな。そうだせっかくだし一緒にチェキを撮ろうぜ」
「ならあの女にやったように後ろから抱きついて撫でなでしてね」
まだハイライトの消えた目で俺をみながら言った。その目は怖いからやめてくれ。まぁ俺がやったのがいけないんだけど。俺はお金をカメラマンに払って美海を後ろから抱き締めて頭をナデナデしてるときにあいの囁きをしようと思った。
「美海俺はお前が世界で一番綺麗に見える。俺の理想だ」
すると美海は頭から湯気を出してプシューという音が聞こえる気がした。ふっこれで俺が美海を意識してることが伝わり気になる存在になるだろう。あれ、でもこれってあいの告白と変わらなくね。気にしちゃダメだやった後だし。
「正弘くんかそんなことを言うなんて照れちゃうよ」
美海は俺をうるうるした瞳でみてくる。可愛い。目をうるうるさせるのがこんなに可愛いとは、これからちょっとした悪戯でもしようかな。
「言いたいことを言っただけだ」
あの目が怖かったって言うのもあるけど。さすがにあの目のまんま写真はホラーだから。それにせっかくチェキを撮るなら照れた顔を撮りたいからな。まぁうざがられる可能性もあったが嫉妬していた時点である程度の好意をもっているのは確かだから試してみた。そしたら思った以上に可愛い反応をしてくれた。
「もう、あんまりああいうのは私以外には囁かないでよね」
「分かっているよ。美海以外に囁くわけないだろう」
「それならいいんだけど。そろそろ行こっか」
俺は二人と撮ったチェキをもらう。なんか俺二股の糞やろうみたいに見えるな。これからはあんまり勘違いさせるようなことは美海だけにしよう。
菅井はハンカチを噛んで悔しがっていた。いやいつの時代の反応だよ。俺はそう呆れながら教室を出て体育館に向かう。菅井は俺の腕をとり歩き始めた。美海は俺の腕と顔を交互にみながら歩いていた。
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