第73話

「美海どうだった?」


「やっぱり演技って難しいね。なにか注意するべきところはある?」


「棒読みになっていたからそれを直すところと、後は楽しかったよというところであざとく首をかしげてくれるといいな」


まぁ棒読みに関して練習をすればなおるだろう。後は細かい動作とかしてもらうとリアル感がでる。このキャラは行動がある程度計算されている。美海もそう感じたからこんな感じのキャラにした。まぁ美海は天然のところもあるけど。


「分かった。気を付けてみるね」


「さぁ皆準備をしに行くぞー!」


どんだけ斎藤は文化祭を楽しみにしてるんだよ。まぁたしかに準備は皆でやって一体感があって楽しく感じるが。だが朝起きるのはめんどくさい。せめて昼からにして欲しい。


「はは、斎藤くんは元気だね」


「まぁ自分のやりたいことをやっているからだろうな」


俺達は斎藤に着いていきながら教室に向かう。

あ、そうだ斎藤に意見をいわないと。俺は少し早足になり斎藤のとなりに並んだ。すると斎藤は少し不思議方にしていた。


「どうした?尾関」


「ディズニーランドのアトラクションについてなんだが」


「ああその事か、作った方がいいってことだろう?」


分かっていたか。さすが映画監督になりたいだけはある。それにしても作っても臨場感をどうやってだすかだな。俺は頭をかきながら考える。


「臨場感は扇風機とパソコンからの音でどうだ?」


「いいなそれ、パソコンに強いやつを探すか」


「それなら俺の友達がパソコン得意だったはずだからそいつにやってもらおう」


よし、これで今でた課題はなんとかクリアした。後は劇の練習を進めてるうちにでてきた課題をクリアするか。後は映画館だが、これはホラーにしているからこれも音だけ出してもらうか。ゾンビ系の映画だから効果音を出してもらおう。


そんなことを考えてると教室に着いた。すると早速小道具を作っているチームに斎藤がお願いしにいった。あの表情を見てるとどうやら作ってくれるぽいな。


俺は最初に背景を作っていたポディションに行き黙々と折り紙を貼っていく。美海が来ないのでチラッと美海を見ていると森田と話していた。胸が少し痛むが恐らくどうやったらうまく演技できるのか聞いているのだろう。


俺はそう思い、再び作業を開始した。広野って黙々と作業するのは嫌いではない。元々俺はひとつのことにしか集中できないが、ひとつのことだとものすごい集中力を発揮する。竜山高校に受かったのも一日十時間以上勉強したからだ。小説も書くときもその集中力を発揮している。


俺は雑音を遮断して集中をして折り紙をちぎってはつけてを繰り返していると、あっという間に二時間が過ぎていた。美海もいつのまにか俺のとなりで作業をしていた。美海が来ても気づかないくらい集中してたんだな。てことは相当進んだだろう。


絵を見てみると半分以上終わっていた。俺はチラッと美海も見た。すると美海はこっちを向いて笑顔になりやっと気づいたんだねと言った。嫌いではないがこれほど集中できるとも思わなかった。やっぱりひとつことに集中できる仕事があっているのかな。


「こっちが喋りかけても聞こえないぐらい集中するなんてすごいね」


「前からひとつのことに夢中になると周りの音が聞こえなくなるんだよ」


「数学もそれだけ集中できたら上に行けるんじゃない?」


「いや数学は無理だ。集中しようにも呪文のようにしか聞こえない」


何回思ったことか。数学に集中するために問題集と格闘したが、結局数字を見て、集中しようとしても頭が痛くなるんだよな。俺に数学の適正はないのだろう。だか東大を目指すなら避けては通れない道だ。菅井とか美海に教わりながら弱点を克服するしかないな。


「でも正弘くんは私大志望なの?」


「元々は早稲田を目指していたんだが、フランス語ならワンちゃん東大に行けるんじゃないかと思い悩んでいる」


「東大のフランス語の問題2級ぐらいっていわれてるね。まぁ記述があるからもう少し難しいかもしれないけど。英語に比べればましだからね」


英語は東大どころか中堅私大に受かるかも分からないレベル。だがフランス語はこの前のテストのように点数がよくて得意科目だから百点以上取れる可能性もある。しかも過去にフランス語で受験した生徒も竜山高校に通っていて、対策も先生はしてくれる。過去問もあるだろうし。


「まぁな、話が変わるんだが、美海俺と一緒に流山駅周辺を見に行かないか?」


「ごめんね今日は悟史くんに演技を見てもらうんだー。だからまた今度誘ってね」


森田と二人っきりではないだろう。恐らくあそこには松永もいるだろうし。いい雰囲気にはなったりしないだろう。後俺のかいた脚本でそれだけ一生懸命に役になりきろうとするのは嬉しい。だから止めはしない。


「分かった。文化祭終わったら行くか」


「おーい今日の準備はここまでにするぞ。各自忘れ物ないように買える準備をしてくれ」


「終わりみたいだな。じゃん俺は帰るわ。また2日ごな」


「うんまたね。流山行くの楽しみにしてるよ」


俺は帰る準備を終え、森田と笑顔で話している美海に若干嫉妬しながら俺は教室をでた。下駄箱で靴に履き替えて、門をでると見覚えのある姿が見えた。菅井か、ていうかめっちゃ目立ってるじゃん。気付いてないふりをしてスルーしよ。無駄に嫉妬を集めるのは得策じゃないしな。


「あ、正弘くんじゃん待ってたよ~」


気付かれてしまった影の薄さには自信があったんだが、菅井のレーダーには意味がないらしい。はぁーすごい嫉妬の視線が俺に来る。なんであんなやつがという視線が。


「ずっと待っていたのか?」


「10分ぐらいだよ~」


「というかなんで俺が今日学校にいること分かったんだよ」


「私のいとこがね正弘くんの担任なんだ~。だからどのくらい作業が終わるかもチェックしてもらってたの」


芝田先生か、あの人やたら美人でうちの生徒が何人かマジ恋してる。まさか菅井の親戚だとわわ。タイプが違う美人だから分からなかったわ。


「んで用件は?」


「せっかくここまで来たし流山散策しよ」


「まぁいいが、ちょうど一人で行く予定だったし」


「一人なんて寂しいね」


菅井はおよよと涙を流すふりをしながら言った。ぼっちをバカにしてるのか。一人は誰にも邪魔されないて自分の好きなところを行ける利点があるんだぞ。


「一人ぼっちはそんなに悪くはない。大体なんでもかンでも二人以上じゃなきゃ行けないというやつの方が分からん。そんなルールなんかないのに」


俺はしばらく一人ぼっちでどこか行く素晴らしさを説いていた。















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