第61話
うん甘さが口の中で広がって美味しい。それに食べ応えのある厚さ、やっぱりここのホットケーキのうまさは別格だ。美海を見ると目を細めて美味しい~と言って頬が緩んでいる。お気に召したようだな。メイド喫茶に行かないでよかったわ。
「あ、正弘くんあーん」
笑顔になりながら美海が俺にホットケーキを一切れ自分の使ったフォークでしてきた。
うぉー間接キスだ。美海のことだから誰にも流行ってないだろう。恐らく森田にはやっているだろうが。幼馴染みだしなそいうことあまりキにする関係じゃないのだろう。
俺はにやにやしそうな顔を引き締めながらフォークにかぶりついた。美味しい。甘さが倍増した気分だ。俺は甘いものが好きだ。つまり間接キスはより好みの味に近づくってことだ。
俺も一切れ取って美海にあーんをした。すると美海はパクッとフォーク咥えた。
「おいひぃー。秋葉にもこんなに美味しくておしゃれなお店があったんだね」
「まぁな最近はカップルも多いからな。こういう店もあるんだよ」
俺はそういいながら美海の口のつけたフォーク眺めていた。すると美海がはっとした顔になった。間接キスをしたことに気付いたんだろう。
フォークと俺の顔を交互に見ている。
「ごめんね、間接キスになっちゃったね。ついつい悟史くんとやってるみたいしちゃった」
謝るってことは間接キス自体をすることは問題ないってことだろう。それならよかった。もう食べれないよとか言われたら俺は家でわんわんと号泣している。
「俺は気にしないタイプだから問題ないぞ」
嘘です。気にしすぎて今にもにやけちゃいそうです。このフォークで早く食べたいぐらいのレベル。キモいな。でも仕方ないだろう。美海と間接キスなんてまたあるとは限らないし。
「それならよかった。たまに潔癖な人とかいるからね」
それにしても森田は毎回あーんをしているのだろうか。胸がムカムカするな。嫉妬か。だがそんなことよりも今は美海と間接キスできたことを喜ぼう。嫉妬をしても悲しいだけだし。俺はフォークでホットケーキを食べた。さっきよりも甘味が増した気がする。今俺は必死に正常な顔でいようとしているからパクパクどんどん食べ進めている。
半分食べ終わったくらいに美海がもう一個ちょうだいと言うので一切れつかんであーんをした。二回目は特に緊張することなくすんなりいけた。俺達の回りには甘い空気が漂っているだろう。やけに回りの人がブラックコーヒーを頼んでいる気がするし。まさか美海とこんなに甘い雰囲気を出せるときが来るとは人生何があるか分からないものだ。
俺はさらに甘さが増したホットケーキを食べ終えた。そしてカフェラテを飲みながら雑談をする。
「美海はやっぱ声優アイドルを目指すのか?」
「うんアイドルの活動もしたいからね」
まぁ美海なら問題ないだろう。ルックスはアイドル並みだし、二次元のヒロインのようなオーラもでている。声優好きがまさにはまりそうなタイプだ。もしかしたらアニメしか見ない層にもファンができるかもしれない。それだけの可能性を秘めている。ただ不安なのはスキャンダルだ。アイドル声優は恋愛禁止ではないが恋愛するとファンが減るということも良くある。つまり俺が付き合えるかどうかは事務所次第ってことだ。まぁなってから考えればいいか。
「頑張れよ。俺がファン一号だ」
「うん、頑張るよ」
「81プロデュースの養成所に通うか、専門どっちにするんだ?ちなみに養成所はかなり高いぞ」
「それなら専門かな。さっき調べてみたけど半年で終わるらしいし。後声優についてもっと教えてくれない?」
まあ養成所はお金かかるし時間も一年間だからな。それに専門の方がいろんな事務所に見てもらえる。まぁ美海は最初にスカウトしてきた81プロデュースに行くだろうが。
「分かった。声優になると、まずはジュニアに所属することになる。ジュニアはどんだけアニメにでても一日一万ちょっとしかもらえない。これが声優が食っていけないとなり挫折する要因だ」
「バイトぐらいの給料しか貰えないんだね」
「ああ、だがランクが上がれば一回の放送で十万以上もらえることもある。まぁだから新人のうちは売れてもランクが上がるとコストがかかって売れなくなることもある」
このせいて俺の好きな声優が何人もアニメにでなくなった。最終的に勝ち残るのはタレント性のあるやつと演技がうまいやつだろう。タレント性があればバライティー番組のレギュラーになれることもある。最近声優は人気があって需要は高いからな。
「ふーん要するに色々新人のうちに磨いて方がいいってことなんだね」
「まぁそ言うことだな。アイドル過ぎる売り方は注意だぞ。年を取った時に人気がなくなるからな」
「アイドルよりも大変なんだね。アイドルは有名のアイドルグループにいるうちは安泰だし。まぁ卒業した瞬間に見なくなる人は多いけど」
アイドルと声優に似ている。なにか武器がないと卒業や年を取った時に需要がなくなるからな。小説家は一回売れれば次の作品も大体売れるんだが。
「それにしても正弘くん声優に詳しいね。ファンだったりするの?」
「いや、実は声優で有名になれば小説が売れると思って目指してるときがあったんだよ」
「へぇーそうなんだ!せっかくだし一緒に目指してみない?私と正弘くんで主人公とヒロインを演じるのってなんか素敵じゃない」
美海は目を細めた微笑みをしながら言った。
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