連携!!二人力合せて
「剣刃の魔術!!」
「侵入者迎撃装置、パワーオン!!」
無数の杭と剣山が打ち込まれ、Dr.ウランを追いかけていく。
高圧の放射線によって機械や魔術の動きを阻害してはいるが、ウランのエネルギーを操作する速度よりもDr.マギカの魔術やDr.シンスの機械の方が素早く太刀打ちできないでいる。
「逃がさないぞ!!」
「必ず、その病気は治す!!存在しちゃいけないものなのよ。」
「これ以上僕から奪わないでくれ!!ほんの少し目を瞑ってくれるだけでいいんだぞ!!」
当初の計画では、Dr.マギカやDr.シンスを少し脅して、自分の病気の治療をさせないようにするつもりだった。ファスやリチを通じての治療アプローチをも逃れるために仕込みもしてはいたが、本当に殺すつもりなどありはしない。
二人に娘がいたのは計算外であったが、一方的に指示を出すばかりで向こうからの報告を聞くことを怠った自分への罰だと思うし、そもそも、彼女の存在で何かが変わるとも思えない。
彼らにとって、Dr.ウランは敵でありながら患者でもある。
致命傷となるような一撃は逸らされているものの、彼らの扱う魔術や機械には微量の睡眠作用のある麻酔毒が含まれており、無理やりにでも治療をするつもりのようだ。
「クソッタレ!!どうして僕に構うんだ。放っておいてくれ。」
「違うな。お前本当はその病気を治したいんだ。けれど、それ以上に不安なんだよ。」
「私たちはそういう患者をいくつも見てきた。だからこそ、貴方を治したい。これは医者のエゴよ!!」
きっぱりと言い放った。
患者相手に嘘っぱちの取り繕ったようなことを言うはずがないのだ。
心の底から救いたいという一心のみで話している。
「暴れるな!!」
「うるさい、うるさい、うるさい!!僕に触るなァァ!!」
『
崩壊したウランの残滓をかき集め高圧のエネルギーを暴走させる。
単純な爆発などとは違い、爆発のエネルギーが次の爆発を作り出すという特殊な構造になっており、無限ともいえるエネルギーの原理であった。
地面が蒸発し、灼熱の霧が生まれる。
すでにスズには特別製の白衣がかけられており、その上で簡易的な防護シェルターによって守られている。百回核爆発を引き起こしてもびくともしないだろう。
だが、真に危険なのは、間近で喰らったDr.マギカとDr.シンスである。
シルヴァの上半身、特にパワードスーツの無くなった右腕は跡形も無く消滅しており、それ以外の部分でも皮膚がゲル状に液化していた。
レンドの体はもっと悲惨であり、魔術では防ぎきれなかったためか辛うじて人と分かるような肉塊を残して死んでいた。
スズの白衣に編まれていた魔術が効果を失う。同時に、機械への電力供給も失われて、シェルターも単なる鉄くずへとなり替わった。
「お父さん、お母さん…?」
いくら放射線を操れるとは言っても、あれだけの至近距離での爆発であれば、Dr.ウラン自身も無事ではないようで、全身が焼けこげ変色して黒ずんだ血を吐いていた。
そのボロボロの体のまま、へたり込んで涙を流すスズを睨んでいる。
「お前も、
よく考えてみれば、いくら魔術や機械の力があるとはいえ、あり得るはずがない。爆心地から離れてはいるが、たかだか数mの違いであり、彼女が無傷で済むわけがないだろう。
「お前も
「なんで…。わからない。どうして……!!」
Dr.ウランがスズめがけて放った核エネルギーは、まるで意思を持っているかのように彼女の脇を添えて突き進んでいった。
「認めないぞ!!それはダメだ。この病は僕だけのものである必要がある。他の誰かが抱えているというのは許されない…。」
「逃げなきゃ、ファスとリチの所に!!」
茫然とするDr.ウランを置いて市街地へと走り出す。前はクロムがついていてくれたが、今は誰もいない。
頼もしい父も優しい母も、いつも自分を見守ってくれていたクロムやゴルディアでさえ、Dr.ウランの手によって全員殺されてしまっていた。
「アイツを止められるとしたら…!!」
最後の希望である二人の顔を思い浮かべながら、涙を噛み殺しながら街中を走り抜ける。
人類の幸福を謳っている以上、無関係の民間人を巻き込むような攻撃は出来ないようで、逃げ惑う彼女を追いかける気配はなかった。
「ファス!!リチ!!お父さんとお母さんが大変なの。助けて!!」
「おやおや、ドクターの娘さん。たしか、スズちゃんですか?」
ファス薬舗の中にいたのは、薬屋でも自然主義の魔女でもなく、腰痛持ちの元傭兵老人ヘルニアだった。
「ヘルニアおじちゃん!?どうしてここに…。」
優しい笑顔を向けて手を伸ばす老人に一歩引いてしまう。向けられたその手は、真っ赤に濡れている。
「ファスと、リチは…!?」
「奥で死んでいたよ。私が殺した。」
衝撃的な一言でありながら、どこか納得してしまう部分があった。
そもそも、総合病院に奇病患者がいると教えたのはこの男だった。しかし、なぜそれを知っているのだろうか?いったい誰から聞いたのだろうか?
それだけではない。Dr.ウランが絡んでくる病気はたいてい彼が持ち込んだものだ。そして、その奇病患者たちを治療すると決まって、その後の経過を知りたがる。
怪しいと思っていたわけではない。
ただ、納得がいったのだ。
「よく気付いたね。その通り、私はDr.ウランの手下さ。あの人が見せてくれる未来には希望がある。妻が生き返る可能性があるんだ!!悪いが、それを邪魔されるわけにはいかないな。」
薄暗い店内で、その男は邪悪に笑った。
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