第2話 egoの館

01

荘園の闇は深い・・・

まるで、死を感じたときに訪れた暗闇の様に

朝なのかさえわからない霧の中に佇む屋敷があった

深遠なる佇まいの森の奥底に、ひっそりとした建物の周囲には

霧が立ちこめて、ここからでは周りの景色も人が住んでいるのかさえ

わからない


異世界なのか・・?いや多分ここはどこでもない場所

人のegoの終着地

もっと奥を見てみよう・・おや?窓辺からぼんやりとした

影が映る・・果たしてそれは人だったのだろうか・・?

ーカチャッー

部屋の中にはふんだんに装飾された家具が施されていたその中で

誰かが、珈琲を口へ運んでいる様だった


「ふぅ・・美味しいね、やっぱり朝はバターパンと甘めの珈琲に限るね」


そういって灰色の髪、灰色のスーツに身を包む青年は優雅に食事を摂る

落ち着いて食事をしていながら


「おっと、・・ここの書類、記載ミスだね・・資料はどこかな?」

席を立とうと一度後ろを振り返り、ドアの方向を見やる


「・・でも、今日は静かだし、皆が起きるまでゆっくりブレイクしてようかな?」

そういって、仕事を遅めにもう一度口に珈琲を運んだときだった


ーバシャァンッー


鮮やかに誰かの手が「僕」の頭を叩き付けた


「朝とかそんな概念もろくにない世界で、相変わらずだね・・幽」


「熱っ・・!痛い痛い・・そ、その声は」


「何・・・目、冷めたかな?」そういってニマァーッと口の端を

まるで小悪魔の様に笑顔にしている長髪銀色の娘が立っていた


「ひ、酷いないきなり、、ましろちゃん。駄目じゃ無いか、

他人にそんな事しちゃ、危ないよ?」


「ん?君だからしてるんじゃない?まぁ他人は他人であってるんだけどね。

相変わらず、君は偏屈で寂しい男だなぁ」

そういってふふっと笑うましろ


「・・・ん。・・今日はどことなく機嫌が良いね?何かあった?

爽やかな朝だからかな?」


「爽やかな朝・・かぁ・・って、「朝」なんてそんな概念すら無い様なこの世界で、ナニが爽やか・・だよ。それに、気分絶好調の絶不調だよ 笑」

「なんでハイになってるか知りたい?・・それはねぇーめでたく悪夢にうなされたからなのだぁー」


「えぇ?!・・じゃぁ、ずっと眠ってないの?駄目じゃ無いか

魂を休めないと、、保てなくなるよ」


「だぁって、私、眠るの嫌いなんだもん。慣れてるし 寝るの大嫌い」


「そんな事いったって・・ここで眠らないでいたらどうなるか、最初にいた君の方がよく知っているはずだよ」


「もぅ、つまんないなぁー知ってるよぉーそんな事」

「君って本当につまらない男だよねー」


「別に、つまらなくて十分間に合ってるよ。僕の望みなんか何もないからね」


「えー嘘ばっかりだね、君って。まっ人間そんなもんだけどさ」


「はぐらかさないでくれ・・それにいかに僕でも、まだまだ蘇生術は

完璧じゃない・・。この館の主だからって何でもできる訳じゃ・・」


「あーぁ、つまんない話はいいよーぅ?もっと楽しい話しようょぅ?」


「久しぶりに話せたかと思ったら・・・本当は体・・しんどいんだろう?」


ースッー



「あっ、ちょ、、やだっ」



「・・・やっぱり・・僕に話しかけてきたのも、皆にばれたくないからでしょ?・・ここまで体が朽ちてきてるよ・・?」



「うぅーぅ。乙女の秘密を暴いて楽しい?肌までさらさせて、

ちょっとは空気読めるようになろーよ変態」


「だ、誰が変態だよ・・ほらほら、変な事いってないで、服脱いで」


「やっ・・あんっ、ちょ、、まだ早いってば・・ぁぁ、やん♪」


「こ、こここらっ!まだ僕、何もやってないし、え、や、やらしい声

出さないでよ」


「え~~私、別にやらしい声なんて出してないよぉ?

君が出させてるのかもよ?・・・あ、あん♡(棒読み)」


「もぅ、からかうなってば、、一体何したいのさ・・ほら

あっ!やっぱり・・」


そういって青年はましろと呼ばれた少女の腕を掴む


「・・じっとしてて・・すぐ直すからさ」

「・・・ん。・・・キモい」

「・・僕が?それとも」

「両方」

「か、間髪入れず容赦ないね?僕のイメージ台無しだよ」


そういって、白い肌に薄汚れた呪怨が刻み込まれている腕を青年は取る


「ここまで浸食されて・・穢れが酷くなってるなんて・・しんどかったよね?

もう大丈夫だよ?」


「・・・んっ」


「お願い・・ハァ・・優しく、、して」


「ちょい!・・変な声出す必要ないでしょ?・・綺麗にするね」


そういって、酷くグロテスクに赤黒くなった腕をまずは修繕していく

青年は、一息長く呼吸を止めたかと思うと、吐いた息から霧状の薄光った糸が

出る。それを、真剣な面持ちで、かつ鮮やかに頭上に放った


それから、新体操の紐の様に、静かな雪を降らす様に弧を描き、ましろの

腕から胸。足、背中を包んでいく

すると一瞬だけ、ノイズの様に傷が歪み、瞬く間に元のましろの

綺麗な体に戻っていた。

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