図書室での秘め事

水天使かくと

図書室での秘め事

私は松嶋 楓まつしま かえで

高校2年生。

本が大好き女子。

学校の図書室へよく通っている。


今から図書室へ行くんだけど、今日はいつもより気持ちが弾む!

なんでかって…?

それは私がどうしても借りたい本がおそらく帰ってきてるだろう日だから!


これは私の中であまり公にしたくない…。

だって、私がこんなの読むなんて恥ずかしくていえない!それは…


『片想いの相手を振り向かせる100の方法』


というのも実は私には片想いしている男子がいる。

1年の時からの片想い…。


同級生で同じクラスの 高橋 広樹たかはし ひろきくん。

長身でスラリとしたスタイル。

サラサラヘアで眼鏡男子の真面目で優等生タイプ。


私もそこそこ真面目で優等生…だと自負している。

1年の時から成績もトップクラスにいる…。


だけど…

どんなにがんばっても、高橋くんにだけはかなわなかった…。

だから私はいつも2番…。


その頃は悔しくていつも敵対心むき出しだったかもしれない私を、高橋くんは変に思っていただろう。


でも、ある日から図書委員を一緒にすることになりお互い本が好きなこともあって、すぐに打ち解けた。私が重い本を運んでいるといつも手を差しのべてくれた…。


優しい彼…。

いつもクールに見えたし、物静かだし、黙ってればちょっと怖い…感じにみえてた私はその時から高橋くんに恋をした!



さて…

どうしてうちのような進学校にこのような本が置いてあるかとゆうと…。

うちの学校の理事長がなんと学園恋愛には寛容な方だそうだ!


だから図書室にも理事長の趣味、嗜好が溢れている。

私が借りたい本もその1つ!

ただ、この学園では超人気本なのだ!


待って…待って…やっと!って感じかな…。


ただ、図書室にはちょっと行きづらい理由が1つある!

それは…


カップリングした男女がイチャイチャしても大丈夫…な場所になっているから!

放課後なんかは何組かのカップルがキスしたり…強く抱き合ったり…中には最後までやっちゃうカップルもいるとかいないとか!


逆に1人で居るほうが気まずい雰囲気になる…図書室なのに…。


理事長が寛容なお考えであるからかは定かではないが、先生たちもそこはスルーしているようだ。


なんともおかしな学校かもしれない。

ただ、今の片想い中の私にとってはありがたい!

恋愛に関する本が読めるのだから…。


なんて考える間に図書室へ着いた。

私は1回大きく深呼吸しそっと図書室へ…。


今日は人の気配はあるけどカップルの姿が見えない…奥の方に1、2組ってところかな。


んっ?なんでこんなに冷静かって?

以前、図書委員をしててある程度は状況把握はできてますもので!


私は静かにお目当ての例の本を探した。

うちの学校の図書室の本の多さは他校の中てもトップクラスなのだ!

高さ3メートルはあろう本棚を見渡し…


あった!…と心の中で言ったがなんと3メートル棚の位置にある!

当然、私、153センチの身長では届かない。


でもこういう時のために、ここにはしっかりした足台がちゃんとある。

どこだろうと静かに探してみると、なんと奥の1組のカップルの彼女のほうが足台に立ち、抱き合ってキスをしている最中だった!



私はとっさに隠れた。

な、なんで?これじゃ、本がとれないじゃない!


たぶん身長差カップルとみた!

しばらくは帰らなさそうだし…

「はぁ…。」と私はため息をついた…。


今日はあきらめようと思った瞬間、振り向き様に誰かにぶつかった!

「きゃ!」と小声に留めすぐに口を押さえる。


そこには高橋くんが立っていた!

高橋くんが「シーッ!」と人差し指を立てジェスチャーで示す。


小声で「何やってんの?覗き見?悪趣味だな…。」って!

ちがーう!とまたまたジェスチャーで答え私は状況説明した…。


すると高橋くんがスーッと長い手を伸ばし、私が指し示す本をとってくれた!

すごい!素敵!優しい!

瞬間…ハッ!と気づいた!

私は本の題名が高橋くんの見える位置にきたのを!


しまった…見られちゃった…。


ゆっくり私に差し出す…

「ありがとう…」と小声でいうが恥ずかしくてうつむいたままになっている…。

絶対見えたよね?…見たよね…?と思っていると奥のカップルが、事が終わり帰るのか…こちらに近づいてくる!


ヤッヤバい!と焦った!本を胸の前に抱えながらオロオロしていると…


不意に高橋くんに抱き抱えられ突然のキス!

私は驚きのあまり、目を見開いたまま固まっていた!抱えていた本も床へ落としていた…


その横をさっきのカップルが通りすぎていく。私達のキスシーンをみながら…

「私達よりアツアツじゃん?」といっているのが聞こえた…。


けっこう長いキスだったか…


高橋くんはゆっくりと唇を離す…

私はボーッとしたまま、抱き抱えられている腰も抜けてしまいヘナヘナ…と床に腰を下ろした…。


「おい松嶋!大丈夫か?」

高橋くんが心配していたが、すぐにうなずき返事をしたのでホッとしていた。


「驚かせて悪かった…慌ててる松嶋が妙に可愛かった…気がついたらキスしてた…ごめん…。」

と申し訳なさそうに謝ってきた…。


いやいや!私はびっくりしすぎてただけ…

謝ることなんてないのに!

だって高橋くんを好きになったのは私なの…


「松嶋…誰か好きなやついるのか?」

「えっ!!」

「だったらなおさらだ…ごめん…でも俺は松嶋が好きなんだ!1年の時からな…」


えっ?どういうこと?そうなの?

と頭がごちゃごちゃになってしまった。


「だから本をみたとき…誰だかわからない奴に嫉妬した!抑えられない感情が溢れてきて…。」

高橋くんは困ったような複雑な表情をしている。


私は床に落ちた見開いた本をチラッとみた!


そして私は高橋くんを思いきり抱き寄せもう1度熱いキスを交わした…。


高橋くんは一瞬びっくりしていたようだったが、私の気持ちが伝わったのか…それとも男子の欲望が勝ったのか…

しばらくの間、熱く濃厚なキスに2人して没頭してしまっていた…

まさに周りのカップルのように!




見開いた本には


有無を言わせず強引に熱いキスを交わせ!


と…


かくして、私達はお互いが好き同士であることを確信し無事にカップリングすることに成功したのである!


のちのちにわかったことだけど高橋くんもこの本を密かに熟読していたとかなんとか…!


まっ!いいか…


この本が超人気なのがようやく分かった気がした…


次は誰の手に渡るのだろう…


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図書室での秘め事 水天使かくと @sabosuke

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