宮殿奮闘記

さち姫

そんな気持ちで婚約したのですか!?だったらこちらも動きます!!

第1話婚約解消

 


「オデッセイ・・・大変言い辛いが・・・婚約破棄をしたいと、無かったことにしたいと・・・断りの手紙がやってきた」

言いにくそうに、言葉を濁しながら暗い顔でお父様が言葉を発した。

誰でもその内容なら言い難いだろうし、ましてや我が子の事であれば、尚のことだ。

夕食後お父様に大切な話があると言われ、談話室に行くと、机を挟み、お父様の横にお母様が座っていた。

その横に兄様、向かいに双子の姉様2人が座り、つまりは家族勢揃いで私を迎えた。

その家族皆が神妙な面持ちで、部屋に入ってきた私を一斉に見たのだ。

いい話で呼ばれたとは、到底、思えなかった。

部屋に入った時点で、体が硬直し、冷たい空気と、皆の感情がとても突き刺さった。

キュッと心臓が小さくなる。

お父様が静かに、ここに座りなさいと、お姉様の横を指さした。

机に2通の開封された手紙。

何故、夕食時に言われなかったのか、納得出来た。

召使い、がいたからだ。

いずれはわかる話だろうが、私に気を使ってくれたんだろう。

「・・・今朝王家の使いの者が文を持ってきた。勝手に読んでしまって申し訳なかったが、私宛になっていた為開けさせてもらった」

「お父様謝らないで。私が役不足だったのよ。申し訳ありません、こんな結果になってしまって・・・」

だんだん自分の言葉が力なく、小さくなっていくのが分かった。

お父様は悪くない。内容が内容だけに当主に届いたと理解出来る。

笑わなきゃ。

そう思えば思う程、息が詰まり、涙が出そうだった。

ぐっと唇を閉め、涙を我慢した。

「もっとぐいぐい行けば良かったのかもね」

なるべく平気を装い微笑んだ、つもりだったが・・・皆の顔が一気にほっとした様子に変わりに、良かったちゃんと笑えたんだ、と安心した。

ごめんなさい・・・。

私が・・・足りなかったのだ。

「でも、あまりお会いする機会がなかったんでしょう?」

「そうだよ。忙しい人だって言ってもんね。仕方ないね」

双子のお姉様、フィット姉様ともう1人のお姉様、ゼスト姉様が仕方ないよね、とうんうんと頷きながら、見回した。

それに合わせるように、皆が、優しく微笑んでくれた。

ごめんなさい。

「良かったのではないの?あまり知りもしない人を夫にするよりもねえ、あなた」

「そうだな。オデッセイが好きな人をさがせばいいよ」

お母様とアコード兄様が気を使っているのがわかる。

「ありがとう。そうするね」

無理に作る笑顔がとても、胸を痛くした。

「お父様、もう一通はなんですか?」

話を変えたかった。

これ以上この話をするのは・・・もう無理だった。

自分の至らない事ばかりが脳裏に浮かび、それに対して気持ちが、左右される心の狭さに気づき、いたたまれなかった。

「そうだな。驚くぞ」

先程の暗い顔と一転、とても楽しそうに変わった。

「なんですのあなた」お母様。

「父上?」アコード兄様。

「お父様?」ゼスト姉さま。

「お父様?」フィット姉様。

皆知らないようだ。

興味津々で、私もお父様を見た。

とても嬉しそうだった。

「宮殿の召使いに選ばれんだ」

お父様の嬉しそうなその言葉に、静かになった。

・・・?・・・宮殿??

一瞬で理解出来ず、首を傾げた。

「・・・は・・・?」私です。信じられません。

「えぇぇ!!!!?????」ゼスト姉様です。

「マジで!!!!?????」フィット姉様です。

「間違いだろ!!!!?????」アコード兄様です。そして、失礼です。

「本当ですの!!!!???」お母様です。

皆がそれぞれの驚きの表現で、一気に賑やかに、それも、和やかに変わり、ほっとした。

「ちょっ!!どういうことよ!!私達は来なかったのに!!なんでオデッセイなの!?普通すぎる程、普通なのに!!!」

グサッ。

フィット姉様はっきり言わないでよ。

「確かに。この2人なら分かるが、オデッセイだろ!?どこをどう見ても、人当たりがいいだけの、たいして突出して、出来が良い訳では無いのに」

グサッ。グサッ。

アコード兄様!

ぎっ、と睨むと慌てて横を向いた。

「何を、見ているの!普通がいいんですよ。少し天然すぎる可愛らしく、無鉄砲さと、宮殿の召使いの方々綺麗すぎて飽きていたからこそ、選ばれんです」

グサッ。グサッ。グサッ。

お母様・・・酷いです。

「そうだ。オデッセイは、シャトルに似てたまにキツイところが、可愛らしいんだ。素直すぎて、天然だが、そこがお堅い宮殿にきっと花を添えてくれると、特別に選ばれたんだ。そうでなければ、贔屓目に見ても、選ばれる要素がないんだ」

ううううううう・・・

お父様も酷いです!!

「待ってください、お父様!!本当ですの!?見せてください!!」

ゼスト姉様が、とても冷静に言ったのに、確かに、と納得した。

宮殿の召使い。

それは、選別に選別をされた、国に認められた貴族の年頃の女性。

姉様達なら、ともかく、私??確かに疑問符だ。

「そう思うのも仕方ない。これをよく見てみろ」

そう言うと封筒の1つ、それも、王家の刻印がベッタリと押してある封筒から、中身を出し広げた。

「・・・本当ですわ・・・」

フィット姉様の呆然とした呟きに、私はその手紙を手に取り、読んだ。


 

オデッセイ・オーリュウンを宮殿の召使いに選出する。


 

「・・・行きます。私、宮殿へ行きます!」

挽回出来るかもしれない!

ただ、それだけが私の心を埋めつくした。

「待ちなさい。もう少し考えてみてはどうだ?お前はまだ学業が終了していない」

心配そうにお父様はやんわりと断ろうとしていた。

「でも、そんなの待っていたらその時は来ないかもしれない!お願い、お父様!!」

あまりの私の必死さに押されるように、渋々頷いてくれた。

「・・・分かった。とりあえず詳細を見てからだ。そこから、もう一度考えよう」

「はい、お父様」

でも、私の気持ちは固まっていた。

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