楽器界に転生したオレはまさかのシンバルだったので、随一の音色を奏でる事にしました。
アリエッティ
第1話 奏でてシンバル!
楽器が独自に音を奏で、最上の音を響かせるべく奮闘する世界、名をベーツァルバッハ
「ここに今オレは舞い降りた。くだらねぇ現実からオサラバして第二の生活よ!」
今世こそ派手に楽しく遊びまくってやろうと思っていたんだ。
なのに、なのに..なのにぃっ...!
「何でオレだけシンバルなんだよ〜!!」
オーケストラの最端、花形には当然なれず憧れない楽器堂々のワースト一位(たぶん)!
「ふっざけんな、なんでオレが!」
大していい人生送ってた訳じゃねぇのに、来世でもこれか?
「ピアノだギターだの花形にまたもってかれる..オレのミュージックライフがぁ..!」
どうすりゃいい?
また尻窄みなんてごめんだぜ?
「…そうだ、ぶっ壊しちまおう。
この世界から他の目立つ楽器を無くしちまえば、シンバルは常に上位に君臨する!」
オレの今世の邪魔はさせない、オレこそ..シンバルこそが花形一の王道楽器だ!
「…と言ったはいいが、どこなんだここ?」
何も無い、荒れ果てた平地。
砂漠..でもないよな、どこだここは?
「演奏会場だ!」
「ん?」
前方からやって来た乱雑な格好の大柄な三人組が丁寧に教えてくれた。
「演奏会場?
何にもないこんな場所がか?」
「やはりお前、新参者だな?
この世界の常識を知らんとは、ザコ確定だ!
短命だったな、可哀想によぉっ!」
この野郎共..聞いた事もロクに教えねぇで人の事見て腹抱えて笑ってやがる、ムカつくぜ!
「さっそくセッション開始だ!
てめぇら、さっさと構えやがれっ!」
大柄な男と部下の二人が両手を前に構えると、特殊な形状の楽器が出現した。
ユーフォニアム
チューバ セッションレベル60
コントラバス
「ん、なんか出たぞ」
「演奏開始だ! と言ってもお前はソロ!
トリオには到底勝てねぇよなぁっ!」
まぁた三人で笑ってやがる。
コイツら新人潰しだな?
今まで何度こんな事して来たんだ
「それにしても、ユーフォニアムにチューバにコントラバスか..聞いた事ねぇマイナーな楽器ばっかだな。パッとしねぇぜ」
「あぁ..?
だったら聴いてみろよ、オレ達の音色!
直ぐにヤミツキになるからよぉっ!」
一斉にトリオが音を奏でる。
耳に身体に響き渡る、戦慄の嵐。
「ぐおっ!」
「おらおらぁっ!
お前如きじゃ耐えられねぇよ!
オレたちの数値を良く見てみなぁっ!」
「数値?」
セッションレベルが表示された下に一つずつ、個別のステータスバーを見つけた。
ユーフォニアムレベル38 音域43
チューバ レベル38 音域43
コントラバス レベル45 音域38
「音域38ッ!!!」
「笑ってんじゃねぇっ!
レベルは一番高ぇんだよ!」
だが確かに数字は嘘を付かねぇ、音色は身体に相当刺さる。..だがずっと思ってる事がある
「..シンバル。」
掌に2枚の丸みを帯びた金属板、俺の相棒が君臨する。
「シンバルだと? ガッハッハッハ!
見ろよ、アイツあんなもん持ってるぞっ!」
笑ってろよ、マイナー音楽共。
トリオだかなんだか知らねぇが、俺の目にはてめぇらなんざ眼中に無ぇんだよ!
「簡単にシンバルとセッションできると思うなよ、ソロでこそ輝く音なんだよ!」
二つの板を思いきり叩いた。
弾けるように響いた音色がトリオの音を打ち破り、穴を開ける。
「..ウソだろ?」
「オレ達の音域が..」
「破られただとぉっー!?」
セッションにより生み出された音は音壁が、シンバルの一撃で破壊された。
「お前らのセッションは雑過ぎる。
一人で何かを俯瞰で見た事が無い証拠だ」
個々のレベルは高いがセッションレベルに難があった、爪が甘すぎるんだよ。
「もう一発いくぞ」
「あぁ? 舐めてんじゃねぇぞっ!
一度壁破ったくらいで調子に乗んな!」
「無駄だ、お前らもう俺の音域を越せない。
..もしかして、俺の数値見てねぇのか?」
「お前の数値..」
シンバル レベル1
「なんだよ、たったのレベル1じゃねぇか!」
「ち、違いますアニキ..あ、あれ..!」
「あぁ?」
音域 2500
「2500ッ!!?」
「逃げるか? それとも、俺の演奏を聞くか?」
「き…聞かせて下さい....。」
新人潰しを潰してやったぞ、シンバルでな。
「……。」
「気になりますか?」
「‥ああ、奴は使えるぞ。
過去に相当な苦悩があったようだな」
彼方よりシンバルを見つめる謎の二人組。
長い銀髪が殺風景な風に揺れる。
「連れて行きますか?」
「…迎え入れよう、我がオーケストラに!」
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