フューチャー・バトン

あさまえいじ

第1話 世界の壊れた日

―――アース星暦 1999年 7の月 某日―――


 偉大なる母星―――アース。

 数多の生物が住む母なる星だが、有史以来様々な戦いが行われてきた。

 人同士の争いだ。人種、民族、同じ惑星で暮らす同じ人間という種族で争い合ってきた。

 だが、その争いも過去の話。争いが終わり、早500年近くの月日が経った。

 来年、記念すべきアース星暦2000年を迎えるにあたり、盛大な催しが行われることになった。


 アースの星都―――センターガイアは非常に活気づいていた。

 盛大な催しに向けて、各地で大規模な作業が行われていた。来年の今頃、この地は多くの人が来て、大いに盛り上がることだろう。皆がそう信じて疑わなかった。 


 世界は平和に満ちていた。

 人々は笑顔と幸福に満ちていた。

 だが‥‥‥‥‥‥‥‥


「あれはなんだ?」


 空に紅い星が光っていた。昨日までは目に見えなかった何かが、空高く、天の彼方に見えた。

 

 初めて星が確認されて7日が経った。

 その間、星は日に日に大きくなっていった。どんどん、大きくなっていった。

 だが、ある時真実に気づいた者がいた。


『星が大きくなっているのではない。あれは‥‥‥‥‥‥近づいているんだ』


 その真実は人々に伝われることはなかった。

 なぜなら‥‥‥‥‥‥‥‥遅すぎた。


 紅い星が見つかって8日目、世界に焔の石が天から降り注いだ。

 その焔は大地を焼いた。住む家を焼いた。そして―――命を焼いた。

 それでも‥‥‥‥全てが終わった訳ではなかった。


「‥‥‥‥ぁ‥‥」


 それは、小さな声だった。


「‥‥‥‥あ‥‥」


 懸命に振り絞った声だった。

 己が生きていると必死で訴えている。


「‥‥‥‥あぁ‥‥」


 手を伸ばした。空に向かって、必死で、生にしがみつこうと、手を伸ばした。

 誰かに気づいてほしい。今ここに、『自分』は居る、そう世界に訴えた。


「‥‥‥‥‥‥」


 だが、もう声は出ない。

 周囲の焔が命を奪っていく。アツイ、アツイ、アツイ‥‥、泣き叫びたいほどだった。でも、涙さえ流れない。体の水分が失われていくから、涙が出ない。

 それでも、手だけは伸ばし続けた。誰か見つけて、と必死の思いで、伸ばし続けた。

 そして、遂に‥‥‥‥その手が取られた。


「おい! 生きてるか!?」


 答えることは出来なかった。でも‥‥‥‥繋がれた手を力強く握った。

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