女神の紋章は万能です!②

シオンが日々、色々とやらかしている情報は、シオンを守る密偵から逐一報告がされていた。


「むぅ………まさかこれ程とは」


魔王でありシオンの父親であるバアルは、報告書を読む度に配下の者に指示を与えていた。


「シオンが考案した、海の魔魚を内陸部の湖で養殖する件はどうなっている?」


「はっ!魔魚は食欲旺盛で、湖の生態を壊す恐れがあったため、湖に施設を建築し、完全な生け簀で育てることにしました。成長の度合いにより、隣の生け簀に移していくやり方であれば効率的であり、半分は魔物であるため瘴気の濃い内陸部でも、育てることができるとわかりました。順調であります!稚魚からでも1ヶ月ほどでサンマほどの大きさになるので、十分に多くの食糧となるでしょう!」


「そうか」


魔王は一言、頷くと次の議題に移った。


「農園の方はどうだ?」


別の配下が答えた。


「はっ!こちらは凄いの一言に尽きます。瘴気の毒素も中和し、成長した植物は収穫しても何日かすれば何度でも収穫できるとの事です。シオン様は大規模農園以外でもその力を使われ、徐々に農地にできる土地が増えております。元々、人手が余っていたのでこれを機に、第2、第3の大規模農園を計画中です。これで数年後には、多少人口が増えたとしても、食糧不足は改善されると試算されました」


「聞けば聞くほど信じられぬ話だな。しかし、実際そうなっている以上信じざるおえまい」


会議に集まった者達は全員頷くのだった。


「魔王様、シオン様がいらっしゃれば魔大陸は安泰でございます。もっと護衛を増やしてはいかがでしょうか?」

「いや、それよりも不要な外出を禁止してこの魔王城で大事に過ごされるようにすべきでは?」


配下の者に悪気はない。ただシオンの重要性の余り、何かあっては?という意味で意見した。


「いや、しばらくはこのままで行く。特にシオンには魔大陸を隅々まで廻ってもらい、そこに住む者達の問題の解決をしてもらう」

「しかし魔王様!もし万が一にでも人間達などの刺客に襲われたら!?」


魔王は配下の言葉に苛立ち威圧を強めた。


「貴様らは次期魔王であるシオンを城に閉じ込めて置けというのか?」

「い、いえ!?そういう訳では………」


「シオンはマモンに魔法の手ほどきを受けている。すでに並みの者では太刀打ちできぬそうだぞ?」


!?


「なっ!?そこまでなのですか………」

「無論、お前達の気持ちもわかる。シオンの重要性が上がれば心配にもなるだろう。監視は強化しておく」


配下達は一礼して魔王の前を後にした。


「………やれやれ、このままでは身内からシオンを我が物にしようと裏切り者が出そうだな」


魔王は忠実な『影』に配下の者も見張るように指示を出すのだった。


そんな頃シオンは─


「うはははは!大いに食べるがよいぞ!」


両手を腰に当てて、成長させた野菜達を獣人達に食べさせていた。


「うまっ!このトマト甘っ!?」

「こら!リリアは食べちゃダメでしょう!」


調子に乗りやすいシオンは、満足に食べれていない、街の郊外の貧民街で食糧を配っていた。


「さぁ!いっぱいあるからみんなで食べてね♪なくなったら、向こうの畑から収穫して食べて下さい」


こうしてシオンは一部の民から植物を操る魔族だと誤解されながら感謝されるのであった。





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