ちょっと独特でした。

シオンはキョロキョロしながら歩いて行くと目的の人を見つけた。


「あっ!いたいた!おーい、セレスさーん!」


シオンの声に気が付いた人魚のセレスが振り向いた。


「シオンちゃん!またきたの?」

「うん!きちゃダメだった?」


セレスはシオンが魔王の娘だと知っているので首を振った。


「違うわよ。子供だけでここに来るのは危険だよって意味で言ったの。それより、今日来たのは先日の話ね?」

「そうなの。どうかな?できそう?」


セレスは少し歩いて水揚げされた魚を指差した。


「まだ実験の段階だから絶対ではないけれど、この魔魚(マギョ)なら繁殖力が強いから『養殖』できると思うわ」


先日、シオンから提案された食糧増産計画は驚愕だった。海の魚を魔大陸の大きな湖で『養殖』しようというのだ。

魔大陸にも雨は振り、川が流れて幾つもの湖がある。しかし瘴気のせいで普通の生物はすぐに死んでしまう。そこでシオンは食べられる魔物の魚である『魔魚』なら瘴気の濃い魔大陸でも育てることができるのではと考えた。


そして、海で捕れた魔魚を内陸の湖で生きられるかテストした所、海以上に元気に泳いでいたのだ。ブラックバスのようになんでも食べるから生態系のバランスなど様子をみないといけないが、大量の魚が養殖できれば少しは食糧不足も改善できるだろう。


この改革は魔王の指示の下、上級魔族が主導で現在行われるようになっていた。

シオンはそんな事は知らず、提案だけしてセレスさんに丸投げしているつもりなのだ。


そもそも、魔王の娘であるシオンには隠密行動に長けた実力ある配下の者が何人も付いている事をシオンは知らなかった。


「また成果がでたら教えるわね」


そんな時、セレスと話しているとザパーーーン!!!と、突然海から飛び出してきた『もの』がいた。


「あら?いつもより早いわね」

「せ、セレスさんあれ何!?」

「なんなの!あれは!?」


シオンの指差した先には巨大な魚の口が現れたのだった。形は鯨のような口である。


「あら?シオンちゃん達は見るのは初めてだった?」


海面からでた巨大な口から海水が吐き出された。まるで噴水のようである。すると、海水に混じって多くの魚が吐き出されて、漁船に乗っていた木箱の中に次々に魚が落とされ木箱がいっぱいになっていった。


「…………あれは?」

「魔物っていうか魔族達って私も含めて水中で生活できる種族も多いから協力しているの。人間のように目に見えない海中を網で水揚げするより、目で見ながら網を仕掛けた方が捕れやすいでしょう?」


いやいやいや!?

その理屈はわかるけど、あの巨大な生物ってなんなのって話だよ!?


「ああ、あれは魚人族のペットね。大きいけど体格の割に少食で、食べた魚をゆっくり消化するものだから、口で取り込んだ物をすぐに吐き出せば、こんな使い方ができるのよ♪」


意外な漁獲方法にシオンは愕然とするのだった。




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