魔女の親友にさよならを

国見 紀行

プロローグ

 親愛なる友、エンリ・ファーブスへ


 あなたの顔を最後に見たのは、もう五十年ではきかなくなってきました。

 長い長い生涯の旅路も、そろそろ終わりに近づいてきています。

 私は、もう長くないでしょう。もってあと、一年。

 今までは特に自分の生きる時間なんて気にしなかったのに、いざ終わりが来ると分かってしまうと、つい昔を思い出してしまう。

 かつて一緒に遊んだあの村。二人でよく行ったあの丘。

 思い出すのは幼い頃の日々。一緒に遊んだあなたの笑顔。

 運命と言う、陳腐な言葉で片づけるにはあまりにも唐突で、でもその言葉以外ではちゃんと伝えられないほどに、突然の別れ。

 私は、貴方に会いたい。会って、昔のように話をして、遊んで、そして…… ちゃんと、お別れを言いたい。

 無理なのはわかってるけど、もう一度、あなたのいるあの丘に行こうと思います。

 少しあちこちに寄り道しながら、懐かしい顔へ挨拶も兼ねて向かいます。

 もし会えたら、笑顔で迎えてください。


 生涯の友、リンカ・イントネルトより

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