第3話 【スキルの果実】

 晴人は今日もこの転移させられた【謎の森】から脱出するための探索活動と、ここでしっかりと生き抜く為の食料調達に勤しむ。


「今日こそはあの【ふしぎな果実】以外にも他の食い物は見当たらないかな、いや、今日こそは必ず見つけてやる!」


 晴人はこの場所に転移させられた後、【ふしぎな果実】を主食として、生活の糧にしていた。

 そのおかげもあって晴人のステータス各値はかなりのスピードで上昇していた。


 ステータスの上昇は即効的に身体に影響するようで異世界転移をしてから比べると身体が羽根のように異常に軽い。

 

 晴人自身は、元の世界で運動神経が別段悪かっだということもなく、寧ろ運動神経は良い方ではあった。

 そして今の晴人は、ステータス各値上昇の恩恵によって、桁違いの運動能力を保有している。


 今の晴人の身体能力で、元の世界で開催している陸上競技の世界大会に出場したら全種目確実に軽く優勝できる、というくらいにはなっていった。



「やっぱり異世界というのはこうでなくっちゃな!」


 晴人は異世界へと転移させられてしまったが、この【謎の森】でサバイバルして生活するというのには元々の適応能力もあって、かなり慣れていた。


 晴人はこの【謎の森】を自分の庭の如く、木々を忍者のようにぴょんぴょんと飛び回っている。


 晴人は【謎の森】にて新たな発見や新たな食材を探す為に森を出来る限り駆け回る。


 暫くの間、【ふしぎな果実】の収穫と他の食糧の探索を続けてていると、チョロチョロと何処かでみずが流れる音が耳に響いて来た。


 水の音が聞こえて来る方向に誘われるように晴人はそちらの方向に足を進めた。

 

 足を進めた先には綺麗に澄んだ小川が流れていた。


 晴人は小川を見て喜びを隠せずにいる。


「おぉぉぉぉ! ここに来てようやく念願の水が確保できたぁぁ!」


 晴人がこの【謎の森】で探索していた物の一つとしてあったのが、この水である。


 サバイバルにおいてまず確保するべきは水分だというけれど、水がなくても何とか生きて行けたのは、晴人は【ふしぎな果実】を喰らう事によって何とか喉の渇きを抑えていたのである。

  

 水分を摂取することであれば【ふしぎな果実】で事足りるのだが、出来ることなら純粋な水をそのままに喉にゴクゴクと通してやりたい。


 晴人は今しがた発見することが出来た小川へと駆け寄って、手をお椀の形にして水を掬い取る。


「本当にここの水は澄んでいるんだな。それだけこの【謎の森】の土壌環境が良い見たいだな。これなら直接飲んでも問題は無さそうだ」


 晴人は手一杯に掬った水を口へと運ぶ。

 ゴクッゴクッ。

 そして、その水は晴人の渇いた喉を通っていく。


「やべぇっ! 久しぶりに飲む水はめちゃくちゃ美味しい!」


 純粋な水が自分の喉を通ることが久しくご無沙汰だったので、晴人の水に肥えた喉がグゥゥと唸る声をあげる。


 そして、晴人が小川の水を飲んだ瞬間。



 ピロリン♪


『報告、【新聖水】を体内に吸収したことを確認しました。よって【新聖水】の効果をステータスに反映させます』


 ピロリン♪


『報告、【神聖水】によりHPを1000アップさせます』


 小川の水を飲むと、【ふしぎな果実】を喰らった時と同じ機会音が晴人の脳内に響き渡った。



 晴人はこのアナウンスを聞いたのと同時にある推測に当たりをつけた。

 この小川の水は【ふしぎな果実】同様に普通のものではないと。

 そして、アナウンスの内容から察するに、この水というのは【新聖水】と呼ばれるもので、飲むことによって【HP】のステータス値を上げる効果を持つものだと。


 そしてそれに気が付いた晴人は乾いた喉を潤していくのと同時に、【新聖水】を身体に取り込んで【HP】を出来る限りあげていった。



 ピロリン♪


『報告、【新聖水】を体内に吸収したことを確認しました。よって【新聖水】の効果をステータスに反映させます』


 ピロリン♪


『報告、【神聖水】によりHPを1000アップさせます』


ピロリン♪

ピロリン♪

ピロリン♪

………………………………。



 晴人は【新聖水】によってどんどんHP値が上がっていく興奮と、久しぶりに純粋な水が飲めたという興奮で水を大量に飲み過ぎていた。


 水を大量に摂取した晴人は水でタプタプになったお腹を摩るようにして、小川にある大きな岩に腰を下ろし、休憩を挟んでいた。


_________________________________


【名前】竹中晴人(タケナカハルト)

【種族】人族

 Lv.1/♾

【HP】25100

【MP】12100

【攻撃力】20100

【防御力】8100

【敏捷】13100

【知力】10100

【幸運】10100

_________________________________

【スキル】なし

_________________________________


【称号】神の園に踏み入れし者

    異世界人

_________________________________

 

 

【神聖水】を大量に飲んだ甲斐もあって、ステータスのHP値が10000も上昇していた。


 異世界に来てからは、未だに俺と同じような人族や魔物に遭遇していないので、ステータスの基準がどの程度なのかは分からない。

 分からないけれど、ステータスの各値をこのまま上昇させていくことに越したことはない。


 異世界という世界で何が起こるかが未だ分からないのだから。


 晴人は清々流々と流れゆく小川を感傷的な面持ちで眺める。

 

 そしてふと木々の木漏れ日から見える壮大な蒼空を眺める。


「はぁ、この世界で生きていくってのもそんなに悪いもんじゃないな……」


 晴人が感傷的な気分で空を見上げた所、一種の違和感を感じた。


「あれ!? あんな果実は見たことないぞ!? 今までの【ふしぎな果実】は水色に光り輝くやつだったけど、これは——————」


 晴人は念願の水を見つけて興奮していた為に、小川以外の状況を見逃していた。

 そして空を見上げると同時に、そこに晴人が知らない果実が実っている事に気がついた。


 晴人が見つけた果実は美味しそうな林檎のような真紅色をしていた。

 形はというと蜜柑に近い形をしている。


 晴人は高さ5メートル程の位置になる紅い果実をちょこっとジャンプをして木から捥ぎ取る。


 捥ぎ取った果実を眺める晴人。

 

「この果実はどんな味がするんだろうな……」


 味が木になるのと同時に、この果実が自分に何をもたらしてくれるのか気が気でなかった。


【ふしぎな果実】も先ほど見つけた【新聖水】もそうだが、この【謎の森】で食べられる物が晴人のステータスに何かしらの影響を甘えている。


 そこから推察するにこの果実も食した晴人のステータスに何かを齎すと考えるのがごく当然のことだろう。


 見た目も【ふしぎな果実】程の禍々しさはないので、晴人は気にせずその果実の皮を手で剥いて、齧り付く。


 すると晴人の予想通りの事が起こった———




『報告、【スキルの果実:鑑定SP】を体内に吸収したことを確認しました。よって【スキルの果実:鑑定SP】の効果をステータスに反映させます』


 ピロリン♪


『報告、【スキルの果実:鑑定SP】によりスキルに【鑑定SP】を追加します』



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【名前】竹中晴人(タケナカハルト)

【種族】人族

 Lv.1/♾

【HP】25100

【MP】12100

【攻撃力】20100

【防御力】8100

【敏捷】13100

【知力】10100

【幸運】10100

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【スキル】


【鑑定SP】

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【称号】神の園に踏み入れし者

    異世界人

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 晴人が今食べた【謎の果実】は脳内に鳴り響くアナウンスによると【スキルの果実】だったらしく、晴人はこの異世界、【謎の森】に来て初めてのスキルを獲得したのであった。

 それも異世界系創作物ではチートと呼ばれる【鑑定SP】スキルを手に入れたのであった。


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