13 友(初稿)
前話の「12 洞窟」から読み返していて、やはり2000文字以上にしたいと思ったのと、トーヤとダル、2人の心の動きをもうちょっと手を入れたいなと思って、少し書いたり引いたりしました。
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「え?」
ランプの灯りがゆらゆら揺れる。その灯りに揺れるダルの顔を驚いて見た。
「トーヤさ、俺には隠さなくていいよ。この国を出る道を探してんだろ?」
「え?」
トーヤは驚いた。
まさかダルからそんな言葉を聞くことになるとは……
「おまえ、何言ってんだよ、俺はちょっと興味があっただけ」
「分かるよ」
ダルがきっぱりと言いトーヤは黙った。
「俺、トーヤとそう長い付き合いじゃねえけどさ、なんとなくトーヤのことこんなやつだなって分かってきてるんだよ。トーヤさ、俺のこと、利用するつもりで近付いたんだろ?」
「おまえ、何を……」
ダルは
「隠さなくてもいいって」
「…………」
波の音だけが響く。
「トーヤはさ、いいやつだよ。最初にどういう気持で俺に近付いたかとか関係なく、俺はもうトーヤが好きんなってるんだよ、友達だと思ってんだよ」
「…………」
月のない夜でよかったとトーヤは思った。もしも満月に照らされたら、今にも泣きそうな顔になってるかも知れないからだ。
「いいよ、行けよ」
「……行けねえよ……」
「なんでだよ?」
ダル近付く。
「こっち来んなよ……」
「いいから行けよ、この国から逃げてえんだろ?俺、誰にも言わないしさ」
「行かねえよ……」
「なんでだよ」
トーヤははあっと息を吐きながら、ずるずると洞窟の壁に持たれたままずり落ちて座り込んだ。
「おまえ……」
「なんだよ」
「いつからそんなこと考えてたんだよ……」
がっくりと頭を落として小さく聞く。
「さっきかな」
「さっき?」
「うん」
「なんだそりゃ……」
ダルが少し考えるようにする。
「さっきさ、水汲んで帰ってきただろ、フェイちゃんと一緒に。あの時になんて言うのかなあ、なんかそういう雰囲気があったんだよな」
「そういう雰囲気ってなんだよ……」
「トーヤとミーヤさんの間に何か約束みたいなことがあった雰囲気かな」
「…………」
トーヤは答えない。
「多分だけど、フェイちゃんもなんか感じてたと思うぞ、そんな顔してた」
「はっ……」
トーヤは笑うように泣くようにそんな言葉を吐くことしかできなかった。
「寝ながらさ、あれはなんだろうなと考えてたんだよ。すごく大事なことみたいに見えたしな。そしたら洞窟を見たいって言い出した。なんとなくつながった気がした」
「何と何がだよ」
「お別れの準備、みたいにかなあ」
「なんだよそりゃ……」
「俺とフェイちゃんに水欲しいとか言ったのって2人になりたかったのかなって思ったんだ。そんで、そうまでして話したいことってなんだろうって思って、何かきちんと話したかったのかなって」
「そんで?」
「トーヤさあ、結構ちゃらんぽらんみたいな感じだろ?」
「なんだよそれ……」
「だけどさ、それって見た目だけだと思う。おまえ、自分で思ってる以上にちゃんとしてるんだよ」
「ん、だよそれ……」
ダルが明るく笑った。
「だからさ、最初は利用しようとしてたとしても、俺のこともちゃんと大事に思ってくれてることも分かってる」
「勝手に分かるんじゃねえよ、そんなこと……」
「分かるって」
「分かってねえって!」
トーヤが声を張り上げた。
洞窟の中に声が響く。
「おまえな、分かってるのか?俺はお前を利用しようとしたんだぞ?そんでぽいっと使い捨てるつもりだったんだぞ!」
「つもりだったかも知れないけど実際にはやってないだろ」
「これからやるかも知れねえだろうが」
「やるならやっていいよ?」
またトーヤが言葉をなくす。
「そうだな、その方がいいかも知れねえな。ちょっと俺のこと殴るかなんかしてさ、あ、死ぬほどはだめだぜ?ちょっと気を失うぐらい、そうして船に乗っていっちまえばさ、俺もだまされたとか言えるしな」
「軽く言うな、そんなこと!」
「できないだろ?」
ダルが自信たっぷりに笑う。
「な、そういうやつなんだよ、トーヤは」
ダルの笑顔がトーヤには痛かった。
「本当に悪いやつならさ、ミーヤさんに別れになるかもって話する必要もないし、俺のことだってここに着いたらすぐ殴るとか殺すとかしてさっさと船に乗ればいいじゃん」
「様子見てただけかもしんねえぞ?今日は下見だけのつもりだったしな」
「それでもこれって
ダルが新月の空を指差す。
「月だって見てねえんだぜ?そんで町の灯りは見える、すぐそこだ。気が変わってとっとと逃げ出すにはうってつけだ。なんでやらなかったんだ?さっき、俺が外のぞいた時に海に突き飛ばしたって構わなかったじゃないか。でもトーヤはやらなかった、そういうことやれるやつじゃないんだよ。それ知ってるから俺にはトーヤは大事な友達なんだよ」
もうトーヤには返す言葉が思いつかなかった。
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