1 彩雲と暗雲(初稿)
初期の書き始めた頃の文章、どれも「句読点が少ない」ので読みにくいなと思っていました。
句読点を足すついでに、トーヤの幼い時のエピソードを書き足し、国を出る気持ちになった補足をしてみました。
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「もう一日も進めばシャンタリオ、『シャンタルの神域』の中心だ」
そう聞いてトーヤはワクワクした。
ここまで結構の道のりで海は
それでも、途中寄った港では船が進むたびに変わる風景に、変わっていく人の服装の珍しさに、その地その地特有の料理にと、心が沸き立つもののほうが圧倒的に多く、まだ若いトーヤには置いてきた故郷のことより目の前の船先に押し寄せる旅の行く末への期待が大きくなっていった。
はるか遠くへの旅立ちを決意したのは、一番自分の面倒を見てくれていた母の妹分ミーヤの死であった。
かわいがってくれる女たちはたくさんいた。どの女も自分を母の息子だということで世話を焼いてくれたが、まるで自分の子供のようにかわいがってくれたのはこのミーヤであった。
「あたしの名前はね、あんたと同じように姉さんがくれたんだよ。だから似てるだろ、ミーヤとトーヤ」
くしゃっと笑いながらよくそう言っていたなあ、そう思い出す。
そのミーヤが母と同じような病気になった。すぐに命を落とすような病ではないと分かってはいたが、日に日に弱っていくミーヤを見るのは辛かった。
かわいがってくれた母代わりにせめてもと手近の戦を見つけては傭兵稼ぎをしたり、あまりおおっぴらに言えない仕事をして作った金で精のつく物をとできる限りのことはしたつもりだったが、ミーヤが元の体に戻ることはなかった。
「あまり無理しないで、危ないことしないで」
戦場から帰るとトーヤの手をやせ細った手で握ってはそう言ったミーヤ。最後までトーヤの身を案じ、心配の言葉と感謝の言葉だけを残して逝ってしまったミーヤ。実の母の時にはあまりに幼く、何もしてやることができなかった。母の言葉で覚えているのは残していく息子への「ごめんね」という言葉だけだった。もしも母が自分が今の年齢になるまで生きていてくれたらミーヤと同じように「ありがとう」と言ってくれたのかも知れない、そう思った。
ミーヤの
人間というものは、自分のためより誰かのために何かをする方がより有意義に感じるのかも知れない、そんなことを思ったりしていた。
そんな頃「シャンタルの神域」へ行く船に乗らないかと声をかけられた。
ミーヤが寝付いてからはあまり長く町から離れるような仕事は避け、長くとも一月ぐらいでミーヤの様子を見に帰っていた。だがもうその必要はない、いつまで町を離れていてもいいのだ。なにより今ここにはいたくない、そういう気持ちで行くことに決めたのだ。
町を出る時にはそんなふさぎ込む気持ちの方が多かった。
だが、船が進むに連れて若い健康なトーヤの心の闇は次第に薄れ、ついでに海の上で何艘もの船を相手に暴れたこともよかったのか、東の大海を超えて「シャンタルの神域」に近づく頃にはすっかり新天地への期待の方が大きくなっていた。
「そうか、明日の今頃はもうシャンタリオか」
船べりに手をかけて前かがみになり、「んー」と一つ伸びをしてからふと顔を上げると、水平線にかかる雲から虹の足元が見えていた。すごく幸先のいい光景に思えた。
だがその夜のことだった、海がいきなり牙をむいたのは。
上も下も分からぬほど船は風と雨と波に
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