この先……

 気が付いた時、それはお定まりの白い天井に白い壁が視界に入ることとなる。

「ああ、僕は。あの時死ななかったんだ」

 思わず呟いた。

 けれど、何かが変だと思う、気が付くのに時間を要しない。

 周りを忙しそうに歩く看護師さんに向かって手を伸ばそうとしても、点滴が刺さっていてどうすることもできない。

「ねえ、あの……」

 振り返る三十歳代前半だろうか、男性の看護師さんがはっとした顔をして振り返るが口をパクパクとしているだけで、何を言っているのかは何も聞こえない。

「僕はどうなったんですか?」

 と、だけ言うともう何も言うことがなくなり、口を閉じた。

 ついでに目も閉じた、眦には涙が流れる、それは助かったことへの感激のものなのか、それとも無音の中の孤独に対してなのかは一年過ぎた今もわからない。

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