新曲が聞こえる
樹 亜希 (いつき あき)
稔、その人生
僕はそれまで順調に、そう、これといったトラブルのない自分の思うがままの人生を謳歌してきたと思う。その時まではあの夜……。
塾の講師をしていた予備校の最終コマを終えて疲れた体を何とか励まして僕は信号のない横断歩道を渡っていた。と、その時僕は今まで感じたことのない痛みを感じた。同時に脂の匂いや道路の乾いた感じを腕と頬に感じた。僕は耳にワイヤレスのヘッドフォンをして歩いていたために、センターの植え込みから出てきた大型バイクの存在に気が付かなかった。
いつもの僕のお気に入りのドーナツホールの、バッド ディールという曲を聴いていたところだったが、Bメロの部分で僕は人生の終わりを感じた。秋の夕闇の中で静かに流れる自分の血を見ていた。
小野稔はここでおしまい、さようなら僕。自分のレクイエムはドーナツホールが用意してくれたようだと眠りについた。
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