いつもの朝

目を覚ますとぼくのとなりには誰もいなかった。


いつのまにか朝になっている。


ぼくは立ち上がって歩きはじめる。


ここはどこなんだろう。


ゆうべとは景色が違っている。


車が何台も通り過ぎていく。


ぼくはリュックに差してあるペットボトルを取り出して、


中身を少し口に含んだ。


ジャスミンティー。


そう、このペットボトルはぼくのものじゃない。


昨日あの女の子が持っていたもの。


見なれた駅前の小さなロータリー。


ぼくはいつのまにか町に戻っていた。


しかもスーツを着て。


駅の入口の自動販売機で缶コーヒーを買う。


このお金は多分あのハンバーガー屋でもらったおつり。


レシートはない。


ぼくはベンチにすわって缶コーヒーを飲む。


何でぼくは今こうしているんだろう。


せわしなくぼくの前を通り過ぎる人たち。


ひっきりになしに電車がホームにすべりこんでくる。


また一日がはじまった。


ぼくは空になった缶コーヒーを自動販売機の穴にすべりこませて、


人込みの中に飛び込んでいく。


いつものように。

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夏草の誘い 阿紋 @amon-1968

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