第3話 アの国
「さあ、着いたわ。ここが隣の魔国”アの国”よ」
「獣人がいっぱいですね」
「ここの魔王も当然魔王よ。あいつおっさん臭いから、さっさと処分したかったのよね」
「倒したい理由が酷い」
「さー、行くわよ勇者様」
「わー、そんな大声で言わないでくださいよ!」
案の定、周りの獣人に囲まれる俺達。
いや、気が付いたら俺だけだ。
師匠は、空の上で欠伸をしながら俺達を見ている。
いや、ひとりだけ安全地帯ってズルくない!?
「貴様!人間がどこから入ってきた!ここはアの国の魔王、ハーゲル様の城下町と知っての狼藉かぁ!」
「えーと、ここの魔王はハーゲルって言うんだね。頭の毛が少なそうな名前だな」
「き、貴様!ハーゲル様が思い悩んでいる事を口にするとは何たる無礼!死んで詫びろ!」
そのまんまかよ!
いや、ツッコミ入れている場合じゃないな。
取り敢えず、恨みは無いがちゃんとやらないと死ぬより怖いお仕置きが待っているからな。
どのみち、魔王と戦わないといけないのだ。
「禿たのか、禿るのかわからんけど、さっさとかかって来いよ!俺は勇者フェンリーだ。こう見えて、ドラゴンより強いぞ?」
「冗談は顔だけにしろ!くらえ、そして禿ろ!」
「言う事ひど過ぎない!?てか、禿ろってなんだよ!」
と文句は言いつつも、相手の動きを見て躱す。
今度はこっちの番だと、しっかりとなまくらの剣を握る。
・・・あれ、これ訓練用の剣だわ。
「やばっ、これじゃ斬れないじゃないか」
「今更命乞いか?遅いわっ!」
「わー、わー!もう、これでやるしかない!」
ポキャと変な音がした。
そして、首が変な方向に曲がった獣人はそこで命尽きたのだった。
「うわー、痛そう・・・」
「自分でやっといて、それ言うんだ?」
「いや、囲まれた瞬間に逃げた人に言われたくないですよ。…というか!この剣、なまくらの剣じゃないですか!こんなんじゃ、スッパリと斬れないでしょうがっ!」
「もー、煩いなぁ。じゃあ、はいコレあげる」
「…なんすかコレ?」
「ん?砥石って言うの知らない?」
「いや、砥石は知っていますけど。これでどうしろと」
「砥石なんだから、研ぐに決まっているじゃん」
「え?」
「え?」
「まさか、この剣を自分で研いで刃を付けろと?」
「え、それ以外にあるの?」
「そんなん出来るかー!!」
「じゃあ、制限時間は10分ね。はい、スタート。いーち、にーい」
「むりむりむり!」
「しー、ごー。あ、出来なかったら特訓メニュー3倍ね。しーち、はーち」
「うおおおお、無理とか言ってらんねーーー!!ぐおおおおおおおお!!!」
出来なくても出来なければ、死ぬより辛い特訓が3倍になる。
もう、死んだ方がマシだが、師匠は蘇生魔法をぽんぽん使えるので死んでも逃れることは不可だ。
となれば、死んでもやるしかないのだ!
「うららららららららららららっつ!!!」
俺の手が数本あるように見える程の高速で剣を研ぐ。
研ぎ方なんて知らない。
しかし、やるしかないのだ。
それしか俺には道が残されていない!
「おいっ、貴様!こんな道の往来で火花を散りばめて何をしているんだ!」
「どらららららららららららら!!」
「聞いてるのか!?おい、止めろって!」
「どりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!」
「おい、止めろって言っているだろうが!って、アチチ!おい、火が付いているぞ!おい、聞いているのかっ!?」
「ぐぬおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「あ、近くの店に火が付いた!おい、もう止めてくれ!町が火事になってしまう!」
そこで、俺の腕をガシッと掴む獣人の兵士。
しかし、ここで止めては師匠から死ぬより辛い罰が…。
「俺を止めるんじゃ、ねえええええええええええええええええええええ!!!!」
「でゅうおえあああああああああああああ!!」
俺の一撃でキランとお星さまになった兵士。
ごめんよ、君に構っている場合じゃないんだよ。
って、よく見たらもう研げてる?
試しに、そこらの木を拾ってヒョイ。
スパッ。
おおおお…、人間死ぬ気になれば何でも出来るもんだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます