第64話

雅之は自らの正義感を決して曲げようとはしなかった。例え警察の世界で上の命令には必ず従うと教育されても、明らかに間違いであれば従う必要はないと心のどこかに感じていた。


数日謹慎後に雅之は念願のパトカー乗務員の専門の職場に来て早々揉め事を起こしたために面倒な奴と思われ適当な処分理由でその職場を追い出されたのだった。この時雅之を庇う警察官は誰一人いなかった。もっとも配属間もないので知り合いなどはほとんどいなかったが、雅之の行動を職場の幹部は誰一人受け入れようとは思わず、むしろ、問題だらけの先輩警察官は何のお咎めもなく、引き継ぎパトカー乗務員として、自分の命令に忠実な他の警官と組まされ隊に残った。何事も無かったような平然な態度で、隊舎を出ていく雅之を半ばニヤついた顔で見送った。

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