試験!?
––– 翌日。
僕は教室に向かう途中で、奇妙な出来事に遭遇していた。
「おう!ユウト。おはよう!」
…… 一体。
「あっ、ユウトくん。オハヨー♪」
…… 何が?
「ユウトくん♡おはよう」
…… 起こって?!
「……るんだぁああ?! ねえ?カアクちゃん?僕、学校間違ってないよね?!」
「ユウトの阿呆。ウチは皆んなから見えんのやで? 周りから見たら、盛大に独り言を叫ぶ変人やで?」
––– 変になりそうなのは、僕の頭です。
だって、皆んな僕に朝の挨拶をしてくれるんですよ?しかも好意がこもってるんですよ?
「せやな、ユウト不在時に学校に作ってた幻影がそうさせたんやろうなぁ。よかったやん、友達いっぱい出来て」
「いやいやいや、僕よりハイスペック仕様にしちゃったの?ねえ?なんの嫌がらせ?!」
しかし、僕の狼狽をよそ目に、鼻をほじりながら答えるカアクの言葉に僕は声が詰まってしまった。
「幻影は本人そのままのコピーや。つまり、この数ヶ月で、ユウトは皆んなに受け入れられる人物に成長したって事や」
……僕が、成長した?
「あっ、そうや、その期間の幻影の記憶をユウトに上書きしてんかったわ。ちょい目ぇ閉じてみ?」
そう言ってカアクは僕の頭に触れ、その瞬間、僕の頭に様々な情報が流れ込んできた。
––– それは、
今までの授業の内容や……
サッカー部に入部して、頑張ってる事?
いじめられている生徒を守った事??
不良グループを相手に拳を交え、友となった事?! etc……
「うっはぁああ!!??なんだ、この情報量の多さはっ!」
「これで、今日からの試験も何とかなるやろ?」
––– あのね?カアクちゃん?僕、昨日徹夜して勉強してたの知ってるよね? これを昨日してくれたら…よかったんじゃない?いや、そうじゃない!
「登校のハードルが爆上がりなんですけど!? 世界記録も真っ青なんですけど?!」
慌てる僕にカアクは、「今までの戦いの方が、よっぽどヘルモードやったやんか?」 と、笑い飛ばしていた。
何とか教室に辿り着いた時には、昨夜の徹夜もあって僕の疲労はピークに達していた。
「もう、ヘトヘトだよ…… あ、佐々木くん、おはよう」
僕は、目の前を通った佐々木くんに挨拶をするが、彼は何も聞こえなかった様に無視して通り過ぎた。
「佐々木くん?どうしたの?」
その言葉に、彼は「僕に関わると君の株が下がるよ。もう、話さない方がいいよぅ」と僕を睨みつけた。
親友だと思っていた彼の言葉にショックを受けていると、僕の周りにクラスメイトが集まりだして……
「ユウトくん、あんなオタクと関わっちゃダメよ」だとか、「ユウト、ソイツなんか放って置いて、こっち来いよ。『お前の為』に言ってるんだぜ?」などと口々に囁く。
––– ああ、これだ。 『人の為』と書いて『偽』と読む。人って自分に利益があるものに対して
そして、用が無くなればいとも簡単に、切り捨てる。そんな裏切りが日常的に起こるんだ。
だから、僕は嘘にまみれた3次元よりも、全て嘘で出来た2次元の方を信用することになった。
でも…… それは、僕が逃げてただけだと最近気付かされたんだ。
「佐々木くんは僕の親友だ! 彼の悪口を言う奴は友達なんかじゃない!!」
気がつけば、僕は大声をあげていた。
一瞬で教室内は静寂に包まれ、驚いた様子で僕を見つめる佐々木くんの視線に、僕はゆっくりと頷いた。
暫くして、「悪かったな…佐々木。ユウトの言う通りだ」と、クラスメイトが口々に謝罪を述べ始めた。
––– そうさ。「僕も大声出してごめん。このクラスは皆んな仲間だもんね」
そんな僕の言葉に、頷いてくれる皆んなの姿が少しだけ自分に自信を与えてくれた。
––– そして気付いたんだ。
『ツカサ先輩とカアクちゃんの言ってた意味が分かったよ』僕の、誰にも聞こえない小声にカアクは『へっ?』と頭を掻いていた。
––– 意図してなかったのね?カアクちゃん。
何とか試験1日目を乗り切り、放課後、僕は保険室に訪れていた。そこにはツカサ先輩の他に、シブの姿があった。
「待っていたよ、ユウトくん。早速だけど本題だ。俺の後継となる社会的欲求の強い人物を教える。勿論、ギルティが使えるかシブにも確認済みだ」
先輩の言葉にシブは頷きながら、「ええ、ツカサさん程の力は無いけど十分な罪があるわ」と、腕を組んでいた。
「先輩……その人物って、もしかして……」
僕の言葉に、ツカサ先輩は『ああ』と鋭い視線を僕に向ける。そして言った。
「その人物の名は…… ラインハルトだ」
「そんな!まさかっ!? ……って、誰?」
次回! 『勇者参上?惨状?』
お楽しみに!!
––– 僕の
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