勇者参上?惨状?

   〜これまでのあらすじ〜


 遂にレクサス天使の咆哮を手に入れたラインハルトは、ヒロインのリラ、神獣ハムと……使えないユウトを引連れ魔王城を目指す事となった!

 待ち受けるアキュラ、インフィニティ、アウディ、ビーエムの四魔将軍を撃破し、彼らは魔王メルセ=デスを打破る事が出来るのか?!


 次回! 『いざ!倒城搭乗

             お楽しみに!

 ––– 俺達のたたかいはこれからだッ!!


「ユウトくん?盛大に現実逃避しているようだけど、どうしたんだい?」


「……ぐっはぁああ!! あのぅ、先輩?! 言い間違えですよね? いや、だって、ストーリー的に『そんな、、佐々木君だって?!』とか、もしくは『小野さんだなんてリラの学校の守衛さん!?』いや、これは無いか。…って展開じゃあ? 誰ですか?その新キャラ?名前もラインハルトって、アニメだったら強キャラですやん?!」

 荒い鼻息の僕に、先輩は「ユウトくん、ちょっと落ち着こうか?」と、苦笑いを浮かべていた。


来院ライン 春人ハルト…… 野球部キャプテン、エースで四番の人物だよ。彼も社会的欲求の塊のような男さ」


「和名だったぁぁあ!!」

「何を喚いとんのや阿呆!」

デジャブを覚えるカアクのツッコミはさておき、残りの『ネスト』が、2つという時点での真打ち登場。遂に始まるのか?キャラインフレが!!


『ユウトくん、大丈夫かい?』と、心配してくれるツカサ先輩。 やっぱり、僕は…先輩と一緒に戦いたいんです。という心の声は表に出さず、『わかりました』と、一言だけ先輩に告げた。


「じゃあ、早速話をつけてくるよ。ユウトくんは、ここで待っててくれ」

 先輩は、そう言い残しシブと共に保健室から出ていった。

 暫く茫然と窓の外を眺めていたが、珍しく何も物言わぬカアクを不思議に思い、僕はカアクに語りかけた。

「僕達の戦いも…あと少しだね」


 カアクは僕の背中に覆い被さる様に抱きついて来ると、「ああ、せやな。ユウト、最後まで生きる事を諦めんなや……」と、何故か僕の頬っぺたをツネってくる。

「いひゃいよ、ハアクひゃん」

そして彼女は素早く指を引き抜いた!!

「痛ッ!!この!! 邪…神……」

彼女は小さな肩を震わせて泣いていた。

「ウチに…もっと、力があったらなぁ……みんなを…犠牲に…せんで……ズビっ」


「カアクちゃん… クゥから聞いたよ。君はこの世界を守る為に堕神したって。そんな君を僕は尊敬しているんだ。だから、泣く事は無いよ、女神様」


「ほんまに…ええ男になりよって!ユウトの阿呆ぅううう」

 –––– ねえ?褒めてるの?けなしてるの?


「カアクちゃん、ところで残りの『ネスト』の在処ありかを知っているんだろう? 次はどこなんだい?」

 僕の問いに、カアクは少し戸惑い口を開いた。

「ユウト、薄々気付いているんちゃうか。モノガタリの力が、封印が長く保たん事を。奴のせいで、『創造主』にコンタクト出来ん様になってもたんや。ちょうど『次回予告』が無くなった辺りからやな…つまり、ストーリーの改変どころか、次の『巣』の位置もわからんのや…」


「…次回予告?ストーリーの改変?」


「ああ、すまん。こっちの話や。簡単に言えば、モノガタリは、この世界を消滅させるために創造主を操ろうとしてたんや」

 カアクは『でもな…』、と含みをもたせた後に言葉を続けた。

「創造主の掌握だけではモノガタリの思惑は達成出来んかった。『対象』つまり、『観測者』がおらんと世界の定義が確立できひんからや」


––– カアクちゃん?サッパリわかりません。


「ちょっと難しいかもしれんが、ユウトは『シュレディンガーの猫』って聞いたこと無いか? あれと一緒や」


––– カアクちゃん?ヤッパリわかりません。

……と、声に出そうとした時だった。

保健室に息を切らせて駆け込んで来たツカサ先輩とシブの表情は、起こったであろうことの緊急性を語っていた。

「ユウトくんッ!!とんでもない事が起きている!!直ぐにグラウンドに来てくれッ!」


 僕はカアクと顔を見合わせると、メダルを握りしめ、先輩に続いて保健室から駆け出した。


     次   回  !

  次…回! 『もう、お遊びは…』

       ––– お わ り  だ。

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