ちょっと?

 〜前回までのあらすじ〜 だよぅ。


 一体どういう事でしょう?

僕はリラさんが好きです。そして、彼女も僕が好きだったと言うではありませんか?!

 ……だけど、僕を救う為に彼女はその想いを犠牲にしちゃったんです。

 はい、人生ゲームで云う『振り出しに戻る』というやつです。

 そうそう、そのあと意識を取り戻したリラのお父様に、胸ぐらを掴まれた事までは覚えてるんですが、僕はその場で意識を失う事になりました。

 気付けば、いつもの天井…僕の部屋に居て、どうやらリラのお父さんが運んでくれたのだとか。

 リラさんが僕の住所を知っている事、つまり、…これは親公認のお付き合いと考えていいのでしょうか? それとも、親降臨でボコられる序章なのでしょうか?

 考えても仕方ありませんね。取り敢えず、隣に居るカアクちゃんから聞いた僕の容体は、手足の筋が切れてて、たとえアジトとはいっても、2日は絶対安静との事でした。


 僕は布団の上で身動き出来ずの2日目を迎えていた。

「カアクちゃん、リラさん帰って来ないね?」

「せやな、ここらへんの『ネスト』は、もう無いから裏側世界バックサイドから干渉される事は無いやろう。リラちゃんは生まれて初めて親子水要らずに過ごせてるんや、いい事やんか?」


 カアクの言葉に「…そうだね」と、呟くが、部屋から色彩が消えてしまった様な喪失感が、僕の胸の奥をかき乱していた。


「ところで、クゥの姿が見えないけど、どうしたんだろうね? 赤いカケラも無くなってしまったし…」

 …そう、何気ない質問だった。


「クゥはな…… ウチとギルティの同時発動したさかい、融合してもたんや……」

 続けて語るカアクの言葉に僕は声を失ってしまった。

 クゥは、赤いメダルと一体化した事。

今後、性のギルティを発動の際はガントレットは出現するが、二度とクゥとは逢えないだろうという事。

 ……まだ、ちゃんと別れの言葉も交わしていないのに。感謝を伝えていないのに!


「せやから、クゥからユウトに言伝ことづてや。『ユウトくん、楽しかったよ有難う。姉ちゃんの事も、よろしくね』やって」

 …僕は言葉を噛み殺した。

クゥが何も言わず居なくなった事、それは、

僕がリラさんにしてきた事と同じだったから。 残された方が、こんなに辛い気持ちになるのだと知ったから。


「せやからユウト、コレを渡しておく」

カアクはそう言って僕に何か小さなものを握らせた。

「カアクちゃん…コレは?」と、言いつつ、僕は気付いていた。

 恐らく掌の中には赤いカケラが有るのだろう。

 クゥが残した言葉…エデンで語ってくれたクゥの姉… ネムという少女のギルティがあるのだと。

 そう思い、手を開いて僕が目にした光景とは……


「…飴玉ミルクの国?」……へ?

 

「また!やってもたぁぁあ!!」

カアクの慟哭が僕の部屋アジトを揺るがす!

 そしてっ!目にも止まらぬ早業で、飴玉が赤いカケラと入れ替わっていた!!


「カアクちゃん、邪神いつもの破壊神ストーリー堕神展開、の、三神三振おめでとう。アウトです」

 …わかってるよ。カアクちゃん…

僕を元気付けようとしてくれたんだよね?

僕はカアクちゃんを信じているよ。

昔から言うじゃないか、『神を信じる者は救われる』って。

「ふふっ、ありがとうカアクちゃん。ところで、その飴はどうやって買ってるの?」

「そんなん、ユウトのバイト代に決まってるやんか♪」

 …前言撤回。 邪神を信じる者は足元をすくわれる。


「この邪神んん!!!」

「なんやと?!懐のちっちゃい男はモテへんで!」

 そんな中、二人しか居ないはずの僕の部屋に別の女性の声が聞こえた。それは、僕のすぐ側、耳元で囁かれた。

「う…ん、もう。うるさくって眠れないじゃない……ふわぁあ…」


 ふわっ?!何故、いつから僕の隣に?!

そこには赤い髪の少女が、同じく赤い瞳を擦りながら、その腕と脚は僕を抱き枕の様に包んでいた!


「ん、ユウトさん。おはよ…」


 うわああああああああ!!!!!

男が憧れるシチュエーション堂々の一位が今ここにっ!

 ダメだ!僕にはリラさんが!心に決めた人がいるっ!! ……って、「誰ですか?!」


「ん、ネムよ。私を忘れるなんて、酷い人。あ、忘れさせたのは私だった…ふわぁあ…」


 ああ、もう、色々駄目だ。目の前のツヤツヤ唇、柔らかな太腿の感触。腕に乗っているプリンの様な……ゲボアァァぷっちんプリン!!

 そんな夢の様な状況下で、カアクが突然声を上げた。


「ヤバいで!ユウト! 危機が迫っとる!」

 …まさか、イヴェが?

次の瞬間!入り口のドアが勢いよく開くと、

「ユウト、何か栄養のあるもの作ってあげる………… きゃあぁああ!!」と、叫び声をあげるリラの姿があった!


「ああ!リラさん!!誤解だ! これには訳が!! べらぶっ!!」

 リラは買い物袋を僕に投げつけ、「この嘘つきッ!!」と、言い放ち走り去っていった。


    次回! 『試練』

           お楽しみに!!


––– 僕の歴史に、また新たなる1ページ!

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