共犯

 ……え? 今、リラは何て言った?

僕の事が好き…だった?

 今までの人生で誰にも言われた事がない、ましてや異性からの言葉。

 多分、凄く嬉しい事なのに、何故か好きという感情が理解できず、僕は途方に暮れてしまった。

 そんな僕をリラは『きっ』っと睨みつけ、足早に近寄って来ると、「ユウト、メダルを出しなさい!」と、僕の腕を少し乱暴に掴んだ。

 その行動にナロゥが慌てた様子で、「リラ!何をするつもりだ?!」と、声を上げるが、リラは怯む事なく言った。

「アナタ達が!ユウトを!! だから私が救うのよっ! ユウトのメダルに触れてね!」


「……リラちゃん、すまんけど、それは堪忍かんにんや。前にも言ったけど、そうしたらユウトのギルティ冤罪えんざいになって力を失ってまう。 …モノガタリに負けて世界が滅んでまう」


 力無くうなだれるカアクに、リラは小さな溜息を漏らすと答えた。

「私はユウトも世界も諦めるつもりは無いわ。冤罪というのは相手に罪が無い場合でしょう? ……私はね、ユウトの『共犯者』になるの!」

 その直後、リラは僕の手にあったメダルを、まるで僕と握手するかのように挟み込み、握りしめた。 

 彼女の掌から流れ込んでくる温かな感情。それが僕の中で小さな火種を起こし始めた。

「ユウト… アナタは強い人よ。だから、戻ってきて…… そして、私と一緒に……

…… 一緒に? なんだっけ??」


 刹那!!僕の感情は爆発した!!

「リラさん!! 僕も好きです!!!」

 そんな僕を尻目に、何故か冷ややかな視線のリラさんは言った。

「え…?ちょっと? ユウト、手汗が気持ち悪いんだけど!」

 そして、僕の手を振り解く。


「あのぅ?リラさん? 何が…どうなったんですか?」

 はい、僕は元通りになれました。それも、リラさんの愛によって。でもなんで手をハンケチで拭ってるんですか? アルコール消毒してるんですか?


「え、あ、ユウト? あのね、何だかアナタの事……好きだった筈なんだけど、今は特に何にも感じないの…… ゴメンね」


「カアクちゃん…… コレは?」

「良かったなぁ、ユウト。性欲が戻って。ギルティの力も失っておらん! でも代償にリラちゃんの想いが消えたんやなぁ」


 あ…あ…あ……

「あんまりだぁぁああ!!!」

「なんまいだぁぁああ!!!」

 コラ!小坊主カアク!手を合わせるなぁ!!

 ––– これは、僕の扱い云々では推し量れない! 悪意を感じるぞぉ!創造主ぅぅ!!


 そのように動悸、息切れを伴う症状の僕は、救心が欲しいところだったが、ひとまずはどうしても伝えたい言葉をリラさんに言うことにした。

「リラさん、本当にありがとう。きっと君に見合う男になれる様、頑張ってみるよ」

 その言葉にリラは、「ユウトのくせに生意気ね。でも、私が一度でも好きになった筈なんだから、もう一度期待して待ってるわ」と、恥ずかしげに答えた。


 …と、いい感じで終わった5つ目の『巣』の破壊だったが、どうやら僕は試練を呼び寄せる体質の様です。

「娘に見合う男だと? 100億年早いわぁ!」

 それは、意識を取り戻したリラの父親が発した言葉でした。


   次回! 『ちょっと?』

         お楽しみに!!


––– 僕の歴史に、また新たなる1ページ!

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