異様な光景

  〜前回までのあらすじ〜 だが


 やあ、ナロゥだ。

それにしても、あのバのやつ…

 ユウトに色々喋ったみたいだな。全く…ユウトの『罪』が半減してるじゃないか。

 まあ、これでリラ達のメダルを暴発させる可能性は無くなったし、その点は安心していいだろう。


 それに、カアクの言ってたがあれば、最後までユウトの『罪』は続くだろうし。

 むしろ、カアクにしては上出来だったな…

 だが…間違いなくユウトの精神は……

まあ、ユウトの犠牲で世界が救われるのだったら、対価としては十分すぎる…か。


「もしもし、カアクさん? カアクさんよ!?」

「 世界の内でお前ほど、頭ののろい者はない…ユウトよ、なんや?」

 …どうしてそんなに呪われたいのか? カアクちゃん?


 今、僕達は『ダフニの館』に向かう途中の車内にいた。

 ツカサ先輩の『メダルギルティ』で発現させた…

パールホワイトの超高級車リムジンで!

 こんなイメージが出来るリラさんは、本当にお金持ちなんだなぁ… まあ、それは置いといて。

「確か…設定では他者のメダルギルティに触ったら駄目だったよね?だから、前にスポーツカーに乗った時、僕…袋に入れられていたよね?」

 …そう、正面の長椅子に腰を掛けている、リラさんを見てもわかる様に、僕達はそのままの姿でシートに腰掛けていた。

「ああ、リラちゃんの学校に向かった時のかいな? あれはギャグや! メダルが変化した後やったら、触っても問題あらへんからな♡」

 …もはや驚くまいて、邪神よ…今からお前を魔王と呼んでやろう!


「でもな、懸念があったのは事実や。ユウトの初めの『罪』の量が多すぎて、ツカサのメダルを破壊する恐れがあったからな…念の為そうしたんや」

「そうか…つまり、僕の力はだいぶ弱まって来ていると云う事なんだね?」

 その言葉に無言で頷くカアクは、少し寂しそうな目をしていた。


「ねえ?ユウト。リスタが言ってた作戦だけど…」

 不意にリラが不安な視線を僕に向ける。

その内容は昨日打ち合わせた件だった。

 『ダフニの館』の擬態イヴェ…

その姿は巨大なロブスターだったとリスタは言っていた。

 その甲殻は厚く硬く、両の爪はハムの『バリア』をも破壊する程だったと。

「僕の刃でも通用しない…か」

 リスタは言った。今の僕では、その擬態イヴェを倒せないと。

「ユウトくん、俺達に任せてくれ。チームだろ?」

 ツカサ先輩の頼りになる笑顔が僕の不安を拭う。

 リスタの作戦では、ツカサ先輩のギルティを、『クラブクラッカー』に変化させるというものだった。

 その、万力まんりきの様な機械で硬い甲羅を砕き、リラがトドメを刺すという…

 だが、擬態イヴェの大きさから、クラブクラッカーも大きくする必要があり、移動する事は出来ない。

 よって、こちらの防衛の為に使用するという条件が強いられるのだ。

 更には、その擬態イヴェの数… 殲滅出来る可能性は絶望的らしい。


「ユウト…気をつけてね」

「リラさん達こそ……」


 そこで、リラとツカサ先輩が『囮』に、

僕が単独で『巣』を破壊する。

 それが、作戦の全容だった。


「みんな、見えて来たわよ!」

リムジンを運転するシブの声で、車内の緊張感が一気に高まる。

 視線を外に向けると、3メートルもあろうか鉄の門扉もんぴが立ち塞がり、左右の扉のそれぞれ中央には『ロブスター』と『沈丁花ダフニー』の装飾が施されていた。

 そして…守衛の姿は見えなかったが、扉は金属の擦れ合う摩擦音と共にゆっくりと開いてゆく…

「流石はリムジン…熱烈歓迎ってところか」

 ナロゥは軽蔑を含んだ言葉を吐き捨てる。


 門を潜った僕達の目に映ったのは『異様』な世界。

 季節外れの沈丁花ダフニーが咲き乱れる庭園に、純白の作務衣さむえに身を包み、幸せそうに踊る老若男女の姿が。

 

 そして、庭を取り囲むように建てられた、古城を思わせる建物の窓からは僕達を見下ろす複数の視線…

 それはまるで張り付いた笑顔の様で…

「こんな気持ちの悪い笑顔…初めてだよ」

意図せず僕の口からは、想いが漏れていた。


       【次回予告】

 普通、主人公って強くなっていくよね?

でもユウト達はその逆なんだ。

 代わりに心は強くなっていくんだけどね!

それにしても美しい建物じゃないか…

 でも言うよね? 綺麗な薔薇には棘があるって。(注9)


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

注9)おや? キミはまだ僕の忠告を聞かず、

 まだこんな愚作を読んでいるのかな?

 僕は早くこのセカイを消したいのに…

 …え?文章に間違いは無いだって?

 くくくっ。いや、カアク達に教えて

 あげようと思ってね……

 綺麗な薔薇にあるのは棘だけど、

 非礼な馬鹿にはトガがあるってね。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 

  次回!『展開出来ない裏側世界バックサイド

            お楽しみに!!


––– 僕の歴史に、また新たなる1ページ!

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