水の中みたい
シオ
短編
「あの娘ってズルいよね」
そんな噂話ばかり立てられているあの娘はどんな気持ちなのだろう?
私東山奈央には到底分からない気持ちである。
世の中は色々なことで2つに分けられる
噂を立てられる人、噂が立たない人
ズルい人、ズルくない人
愛される人、愛されない人
選ばれる人、選ばれない人
上げたら切りがないほど出てくる。
なんて考えている私には1人幼馴染がいた。
名前は西村瞳。
彼女とは幼稚園からの顔見知りで小学、中学はもちろんのこと現在の高校まで一緒だ。
そんな彼女とは数え切れないほど遊んでいるから当然友人として好意を持っている。
家族ぐるみで遊んだことはもちろんショッピングしたり、一緒に夏祭りに行ったりとらしい遊びもたくさんしてきた。
だから彼女が本当は優しくて繊細な心の持ち主であることを知っている。
ただ、彼女をあまり知らない人からしたら彼女は少しズルい人に見えるのかもしれない。
というのも彼女には恋人が良く出来る。
高校に入って1年足らずで3人も人気の男子と付き合っている。
私は彼女と恋愛の話もするのでそこに対して彼女がどれだけ努力をしているのかも知っているし、尊敬をしていた。
しかし、今彼女が付き合っている男の子は実は私が密かに好意を持っていた男の子だった。
私は好意を持っているだけで何もしなかった。そんな自分と比べて彼女が何をしていたかを聞いているからズルいなんて思う資格はないと分かっている。けれども会うたびに嬉しそうな顔で彼の話をする彼女といると綺麗な感情だけではいられなかった。
少し自己嫌悪に落ち入りながらも日常は流れていった。
そんなある日彼女は自分で命を投げ捨ててしまった。
本当に突然だった。つい数日前までいつものように話をしていたのに、急に彼女は居なくなってしまった。
あまりにも突然の出来事で、悲しさが追いつかずに感情の整理が出来なかった。
いつも笑顔で私に話しかけていたのに、心の中では涙を流していたのかもしれない。
ずっと昔から一緒にいたのに私はそんなことにも気付けなかったのか。
また少し自分のことが嫌いになってしまう。
彼女の告別式へ向かうとそこでは彼が泣いていた。
話に聞いていたように本当に彼女のことが好きだったのだろう。
私はあまり話したことがなかったけど思い切って声をかけてみることにした。
私が奈央の幼馴染であることと、奈央が思い詰めていることに全然気づけなかったことを話すと、彼はもっと彼女のことを知りたいから今度落ち着いて話がしたいと言った。
そのままLINEを交換してその日は帰宅した。
私は知っている。
ラムネを飲み干した後、瓶の中に残っているビー玉が少し甘いことを。
彼女が流した涙に潜って僅かに漏れる空気が入っている泡を口に含んでいるみたいだ。
本当は悲しくてしょうがないはずなのに、ベッドの上の私の口元は少し緩んでいた。
「あの娘ってズルいよね」
水の中みたい シオ @sioduhuhu
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