最強魔術師の暗躍無双

荒井優

第一章

プロローグ

 日本国防軍内部にほんこくぼうぐんないぶ そんなものものしい場所に、パッと見場違いな少年があるいていた。

しかし、それに対して驚く者も、気にするものもいない。なぜなら彼は世界中の魔術師の中で序列1位である蒼井零あおいれいなのだから。


    ◇      ◇     ◇


 コンコンと来訪を告げる軽快な音を鳴らしているにもかかわらずその表情は、不機嫌そうだ。


「まだ何も言っていないのだが…」

軍服に身を包んだ初老の男性のセリフは、入ってきた少年の表情に対してだろう。

「まだ何も聞いていませんが?」

 そういって、姿勢を正した。その男性は軍の総帥そうすいであり、立場が上なのだから。

「ふぅ、まぁよい。今回の要件は、新たな任務についてだ。」

そう言って書類を渡してきた。

有栖院家ありすいんけ御息女ごそくじょの護衛ですか…」


 現代日本には、御三家ごさんけという魔術関連の要所に就いている3つの魔術名家のことを指す。

 有栖院家の当主は、魔術協会―軍に所属していない魔術師の管理をしている機関―のトップである。

 ちなみに零の目の前にいる総帥は御三家である翠光院家せいこういんけの現当主だ。


「いつまで護衛すればいいので?まさか3年間ずっとってわけではないでしょう?」

「そこに書かれているとおりだ。懸賞金が掛けられている。軍部われらが懸賞金をかけた黒幕を発見、捕縛するまでだ。」

「黒幕の情報は?また目的などはわかっていないのですか?」

そう聞くと、彼は苦い顔で頷いた。


「はぁ、ならそれはいいです。それでは、なぜ自分なのですか?」

「お前ぐらいしか、同年代の者がいないだろう」

 零は、そんな言葉をかける総帥に対し、呆れたような目を向けた。

「教諭として他の魔術師を送ればいいのでは?」

「それでは、ずっと警護できないだろう?」

「自分が四六時中見張れ、と?冗談でしょう」

「《影》ならいっしょにいなくても守れるだろうに」

 零からしたら、こんなこと不愉快極まりないことだろう。


「了解しました。―でもそれだけじゃないですよね?」

「…何がだ?」

「自分を学院に入学させたい理由です。」

「いや?そんなものは、見当たらないが?」


 そんな反応を見て零は思わずため息をつく。

「はぁ、もういいです。そういうことにしておきます。」

「準備が出来しだい知らせる。それまでは、待機だ」

改めて零は姿勢を正した。

「了解しました。」


 そう言うと、部屋から出ていった


 それを確認すると、フッと笑みをこぼし、

こう呟いた。

「ここまでは予定通り。」と。

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