玄関先の狐

バブみ道日丿宮組

お題:死にかけの狐 制限時間:15分

玄関先の狐

 異世界に憧れて洋服を作ってみた。

 左目を覆うコウモリマークの眼帯、漆黒の闇を彩るマント、純白さであふれるワイシャツ、ゴシック調のスカート、そしてただの革靴。

「……」

 着替えてみてわかるのは、ただのハロウィンパーティーの衣装だということだ。

 いったいどこで間違えたのだろうか……方向性はあってたと思うのだけど、これじゃない感が強い。

「はぁ……」

 大人しくお気に入りのアニメでも見ようかと、ソファーにダイブしようとしたところで呼び出し音が聞こえた。

 いったい何の勧誘なのだろうかと、玄関に向かってみれば……、

「……狐?」

 そこにいたのは倒れてた狐だった。

 そぉっと開けて見て、直接目で確認してみるのもやはり狐。いやいやおかしいでしょ!? 普通狐がチャイム鳴らすか!? しかも弱りきった状態で!?

 むむむむ。

 疑問の答えは出そうにない。

 どうしようか。どうしたらいいのだろうか。チャイムを鳴らしたということは私にようがあったということだろう。

 ここは2階。わざわざ動物が登ってくるような場所じゃない。まぁ……階段登ってくれば普通にこれる場所ではあるが……チャイムはやっぱないかなぁ。

「よし」

 これもなにかの縁かと、玄関オープン。狐にぶつからないように気をつけてね。

 どう持ち上げればいいのかわからないかったから、お姫様抱っこをするようにしてとりあえず持ち上げた。

 そしてゆっくりと部屋の中……お風呂にご招待。

 鼓動を感じたし、熱も感じた。

 偽物じゃない、本物がそこにはあった。

「大丈夫?」

 わかるはずもない人間語をこぼす。

 ぴくりと耳が反応した。人馴れしてるのだろうか? 生きてはいることは確認できた。

 なにか栄養のある食べ物を用意できればいいのだろうけど、何かあったかな?

「とりあえず水かな」

 シャワーを少し流すと、狐は舌を動かした。

 どうやら飲んでくれてるらしい。

 濡れないように固定してと……台所に向かう。

 トマトか、バナナか、りんごか?

 選択肢がたくさんあった。狐が食べられるものはなんだろうか。

「あれ……?」

 スマホで検索しようとしたら、県外になってた。

 振ってみたり、wifi探してみたりしても戻らなかった。なんだよもうと思って、狐の様子を見に行くと、

「あれれ……?」

 そこに狐の姿はなく、小さな女の子が倒れてた。

 まさか、これはひょっとするのだろうか?

 化かすと言われてるし、変化くらいはするだろう。

 人間タイプになれるのならと、私はベッドまで運び、洋服を着せて布団をかぶせた。

 起き上がるまでになんとかご飯を食べさせられるようになって……そこから大事件に繋がるだなんてこの時の私は少しも思ってもなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

玄関先の狐 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る