偉人の父

バブみ道日丿宮組

お題:ドイツ式の父 制限時間:15分

偉人の父

 父の名を知ったのは中学生になってからだった。

 歴史の本に書いてある人でもあると聞いて、自分はいったいなんなのだろうかと思った。

 父であった人に尋ねると、私は遺伝子組み換えをした実験体ということを知らされた。ショックはなかった。別に自分がなんであっても自分には変わらないから。

 ただ……、

「……ん」

 学校で視線を浴びることは多くなった。

 それだけ有名な偉人なのだろうとは思う。

「気になる?」

 でも、

「そうだね」

 幼馴染が側にいてくれるのであれば、それはないに等しい。

 僕が誰の娘であっても変わらずの反応でいてくれることは嬉しい限りだ。

「みんな珍しがってるだけだから、きっとすぐ仲良くなれるよ」

「そうかな?」

 芸能人もそうなのだろうか。

「素敵なお父様を持ったって考えればいいんだよ」

「育ての親しか知らないけどね」

 そう。父は父であっても、父じゃない。

「いっそのこと生徒会長になってみたら?」

 そういって幼馴染は掲示板に貼られたチラシに視線を向ける。

「1年生でそれは難しんじゃない?」

「人気投票みたいなものだから大丈夫じゃない? 別に上級生だから生徒会をやるっていうわけじゃないでしょう」

 なるほど。そういった見方もできるか。

「遺伝子的にはそういった才能もあるんでしょうし」

 にやりと悪い笑みを幼馴染は見せる。

「冗談でしょ?」

「どうでしょうー。ほんとかもわからないよ」

 笑い顔で言われても説得力なんてない。

「まぁ……仮に遺伝子がそうでもあっても注目は浴びただろうね」

 視線が上に。

「やっぱり青髪って変かな?」

「ドイツじゃ一般的だから別に変ではないと思うよ。この国じゃめずらしいだけで」

 幼馴染は黒、クラスメイトたちも黒の髪を持ってる。

 派手な色をしてるのは教師ぐらい。

「イケメン青髪なお父様を持ってるのはいいメリットだと思うよ」

「メリットかぁ……でも、視線は浴びたくないなぁ」

「しょうがないよ。大々的に暴露されちゃったんだから、気にしないでこ」

 屋敷に務めてた執事が情報を入手して世界に流したのがはじまりだ。

 父に聞くまではとても信じられないことであった。

「私も金髪とかにしてみようかな」

「そしたら教師に注意されるでしょ」

 そうだねといって幼馴染は僕の頭に手を置く。

「こんな娘が産まれたとしったら、偉人はどう思うだろうね」

「さぁ……? 時の人だからね」

 出身はドイツで、世界的発明をしたということはわかってる。けれど、それ以外は表に情報が残ってない。

 人は何をしたかを優先して、何であるかは求めない。

 その結果がこの国の歴史だ。

「あっ、先生入ってきたね」

 それじゃあと幼馴染は僕の元を離れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

偉人の父 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る