夜の出来事

バブみ道日丿宮組

お題:夜と殺人 制限時間:15分

夜の出来事

『夜の過ごし方がなんであれ、人は人である』

 俺の祖先はそう言葉を残してる。

 俺としてはしっくりこない。夜に何かをするかで人は変わるからだ。それが人なんてものなのかと断言できるほど、まだ熟してない。

 俺はというと。

「……」

 毎夜のように死んでもよさそうな人物を殺してる。

 そう書いてしまうと、死んでいい人なんていないと間違いなく返ってくる。その意味も当然知ってるし、理解してる。

 だが、死んでもいい人がいるのは事実だ。

 無力な市民に変わって天誅を行ってるといってもいい。

 これまでの殺人はみなそういった理由だ。

 悲しむ人もいるだろうがそれだけの罪を重ねて普通に生きてることがどうにも俺は許せないらしい。

 ただ残虐的に殺すということはしない。できるだけ苦しまないようにきちんと処理してる。まぁ薬の効き方が悪ければ当然、

「や、やめてくれ!?」

 こう叫ばれる。

「……」

 口を縫い合わせれば静かになるかもしれない。この場に裁縫道具がないのが残念だ。どれくらい縫い合わせれば静かになるのか試したくもあったが……まぁいい。

 殴って静かにすればいい。これで気を失えばなおいい。うるさいのは慣れないからな。

「……ん」

 何発か、何十発か殴ると、叫び声は聞こえなくなった。

 なら処理を再開しよう。

 遺書をまずは書く。

 直筆を真似られるのが俺の才能だ。家屋に潜入した際に、いくつかの書類を見てきてる。

 俺の一族は複製に才を持つ。

 俺は簡単にいえば、サインの複製ができる。

 今の御時世にどうしてアナログのものがと思うかもしれない。だが、サインというのはその人だけのものであり、存在価値にもなる。

 無論、デジタルに関しての知識がないわけじゃない。

 なければ、標的に近づくことすら叶わない。

 なんにしても処理を続けよう。遺言は書き終えた。指のサインも被害者のものだ。どこにも痕跡はない。

 死体は道路にいつものように投げ捨てる。

 人はいないな。

 ここでバレてはすべてが無駄になる。

 死体をあれやこれやとレイアウトして、俺はその場を去った。

 今日の夜はこれで終わりと言わんばかりに。

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夜の出来事 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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